Copilot for Microsoft 365 で仕事を効率化

Copilot for Microsoft 365 は2023年11月に Microsoft が提供を開始した、Microsoft 365 での作業を効率化できる AI アシスタント機能です。当初は300シート以上購入する大企業向けの提供のみでしたが、2024年1月16日より Copilot for Microsoft 365 の購入条件が変更され、以下のプランの Microsoft 365 サービスを導入していれば、だれでも1シートから Copilot を購入できるようになりました。
・Microsoft 365 Business Standard / Business Premium
・Microsoft 365 E3 / E5
・Office 365 E3 / E5
・Microsoft 365 A3/A5、Office 365 A3/A5

  • 2024年3月15日のMicrosoftの発表により、法人向け Copilot for Microsoft 365の前提ライセンスが拡大されました。

追加となる前提ライセンス:

・Office 365 E1
・Microsoft 365 Business Basic
・Microsoft 365 F1 / F3
・Microsoft 365 Apps for Enterprise / Business
・Exchange Online
・SharePoint Online
・Teams Essentials
・Project Online
・Visio Online

この担当者コラムでも Copilot については以下の記事で紹介していますが、今回は改めて Microsoft が提供している AI アシスタント機能と、Copilot for Microsoft 365 について紹介します。

なお上記の記事作成時点から以下のようにサービス名称の変更が行われています。
本記事では新名称で記載していますので、ご注意ください。

Microsoft の AI サービス

Copilot は Microsoft が提供している AI サービスのブランドとなっています。現在(2024年3月)提供が開始されているサービスは以下のとおりです(プレビュー含む)。
・Copilot (Copilot in Bing) #
・Copilot in Edge #
・Copilot in Windows #
・Microsoft Copilot Pro
・Microsoft Copilot for Microsoft 365
・Copilot in Power Automate / Copilot in Power Apps (プレビュー)
・Microsoft Copilot for Sales
・Microsoft Copilot for Service
・Microsoft Copilot Studio
・Microsoft Copilot for Security(早期アクセスプログラム中)
・Microsoft Copilot for Azure (プレビュー)
・GitHub Copilot #

#は個人用アカウント(Microsoft アカウント)でサインインすると個人用(商用データ保護なし)、組織アカウント(Microsoft Entra ID アカウント)でサインインすると組織用(商用データ保護あり)として動作します。Microsoft Copilot Pro は個人用のサービスです(後述)。

Copilot / Copilot in Edge / Copilot in Windows / Copilot Pro

このうち、Copilot / Copilot in Edge / Copilot in Windows については「iDATEN(韋駄天)| Copilot(旧称 Bing Chat Enterprise)を使ってみよう」で紹介しています。
Microsoft Copilot Pro は個人向け Microsoft 365 (Microsoft 365 Personal / Family) のサブスクライバーが利用できるプランです(ユーザーあたり月額3,200 円(税別))。個人向けの Microsoft 365 アプリ(Word / Excel / PowerPoint など)で Copilot が利用できます。商用データ保護はありません。

Copilot / Copilot in Edge / Copilot in Windows では、いずれも組織アカウント(Microsoft Entra ID)でサインインすると「このチャットでは、個人と会社のデータが保護されています」「保護済み」と表示され、商用データ保護が有効になります。

Microsoft Copilot for Microsoft 365

Microsoft Copilot for Microsoft 365 は法人向け Microsoft 365 に AI アシスタント機能を追加するアドオンサービスです。Microsoft 365 のアプリやデータと連携して、利用者の作業を効率化できます。
次の節で詳しく紹介します。

Copilot in Power Automate / Copilot in Power Apps

Copilot in Power Automate と Copilot in Power Apps はそれぞれ Power Automate のクラウドフロー作成と Power Apps のアプリ作成でCopilot の生成 AI 機能を利用する機能です。Power Automate と Power Apps のライセンスに含まれています。

Microsoft Copilot for Sales / Microsoft Copilot for Service

Microsoft Copilot for Sales と Microsoft Copilot for Service はそれぞれ Dynamics 365 Sales と Dynamics 365 Customer Service で Copilot の生成 AI 機能を追加するアドオンサービスです。
※Microsoft Copilot for Sales と Microsoft Copilot for Service には Copilot for Microsoft 365 の機能も含まれています。

Microsoft Copilot Studio

Microsoft Copilot Studio は組織の開発者が独自のカスタム チャットボット(Copilot)を作成できるサービスです。以前に Power Virtual Agents として提供されていたボット作成機能が含まれています。
Power Virtual Agents と同様、Teams 内に設置する AI を利用しないボットの作成は Teams ライセンス(Teams を含む Microsoft 365 サブスクリプション)で利用可能ですが、AI チャットボットの作成などには専用のライセンスが必要です。

Microsoft Copilot for Security

Microsoft Copilot for Security は、組織のセキュリティ状況を分析し、最適な対策を提案する AI チャットボットです。Copilot for Security は、ユーザーの質問に応じて、Microsoft 365 のセキュリティ機能や設定方法を説明したり、セキュリティインシデントやアラートの対応方法を示したりします。Copilot for Security は、組織のセキュリティポリシーや環境に合わせてカスタマイズできるだけでなく、自律的に学習して最新の脅威や対策に対応できます。
早期アクセスプログラム中、Microsoft Copilot for Security には Microsoft Defender for Endpoint P1 ライセンスが必要です。

Microsoft Copilot for Azure

Microsoft Copilot for Azure は、ユーザーが Azure にクラウド リソースをデプロイして管理するのに役立つ AI チャットボットです。Copilot for Azure は Azure のサービス、機能、ベスト プラクティスに関する質問に答えるだけでなく、仮想マシンの作成、Web アプリのセットアップ、バックアップの構成などの一般的なシナリオをユーザーに案内できます。Copilot for Azure は、ユーザーのクラウド環境の正常性とパフォーマンスを監視し、最適化とセキュリティに関するアラートと推奨事項を提供することもできます。Copilot for Azure は、ユーザーの好みやニーズに合わせてカスタマイズでき、フィードバックや使用状況から学習して、その精度と関連性を向上させることができます。
現在プレビュー中で、プレビューへの参加は申し込みが必要です。

GitHub Copilot

GitHub Copilot は、AIがあなたの入力に応じて最適なコードを提案してくれるコーディングアシスタントです。あらかじめ決められたテンプレートやスニペットではなく、大規模なコードデータベースから学習したAIが、利用者の目的や文脈に合わせて新しいコードを生成します。GitHub Copilot を使うと、素早く正確なコードを書くことができ、面倒なバグやエラーを減らすこともできます。GitHub Copilot は Visual Studio や Visual Studio Code などの人気のある開発環境に統合されており、GitHub CLI を使ってコマンドラインからも利用できます。
GitHub Copilot を利用するには、個人で使用する場合は個人ライセンスが、チームで使用する場合はビジネスライセンスが必要です。

Microsoft Copilot for Microsoft 365 の紹介

それでは Microsoft Copilot for Microsoft 365 について詳しく紹介していきます。

Microsoft Copilot for Microsoft 365とは

Microsoft Copilot for Microsoft 365 は大規模言語モデル(LLM)と Microsoft Graph* を統合したサービスです。Microsoft 365 に蓄積されたデータを AI が検索・分析することで、ユーザーとの対話(チャット)を通じて業務を副操縦士のようにサポートします。

* Microsoft Graph とは、Microsoft 365 のさまざまなデータ(ファイルやメッセージ、スケジュール、アカウント、ユーザーのアクティビティなど)にアクセスできるアプリケーションインターフェースです。

業務でよく使うアプリである Word や Excel、PowerPoint に統合されているほか、Teams、OneNote、Loop、Whiteboard、Forms といったアプリやサービスにも統合されており、それぞれのアプリでの作業を AI がサポートしてくれます。

Copilot for Microsoft 365 でできること

以下に各アプリで Copilot for Microsoft 365 が行えることの例を示します。

  • Excel:
    情報のまとめやグラフ化、データの分析などを依頼することができます。
  • PowerPoint:
    Wordで書いた原稿を元に、提案資料のベースの作成等を依頼できます。
  • Word:
    OneNoteのメモや、他のWordファイルの内容を元に、原稿案の作成を依頼できます。
  • Teams:
    会議中には、会議途中でも聞き逃した内容の要約を依頼することができます。
    会議終了後には、議論した内容の要約に加え、必要なタスクの洗い出しや会議後のアクションをフォローしてくれます。(これにより、会議に参加できない時でも会議内容を短時間で容易に知ることができます)

    Copilot が生成するコンテンツの精度は、十分に実用的です。実はこの記事の「Microsoft の AI サービス」の節にあるMicrosoft Copilot for Security と Microsoft Copilot for Azureの説明文は、Word で Copilot を使って作成しています。

    生成された文章は日本語として自然で、そのままでも人間が書いたものと見比べて劣る所はありませんでした。

    ※ライセンスに関する説明など一部正しくなかった所があったので、その部分は修正しています。

Copilot for Microsoft 365 の仕組み

Copilot for Microsoft 365 の動作の仕組みをより詳しく見ていきましょう。
ユーザーのプロンプト(指示)に対して Copilot for Microsoft 365 が応答を返すまでの流れは以下の図のようになります。

ユーザーが Microsoft 365 アプリケーションでプロンプトを入力すると(①)、Copilot for Microsoft 365 は Microsoft Graph を利用したグラウンディング(AIが言葉や概念を、具体的なものや実際の世界と結びつける動作)を行います(②)。ここで Microsoft 365 テナント内のさまざまなデータが利用されます。
グラウンディングで取得したデータと元のプロンプトを統合して、Copilot for Microsoft 365 は LLM(大規模言語モデル)に最適化されたプロンプト(LLM が最も処理しやすい形に加工したプロンプト)を送信します(③)。これに対して LLM が出力(回答)を生成して Copilot for Microsoft 365 に返信します(④)。

LLM の呼び出しは Azure Open AI Service が利用されており、現時点では海外データセンターで動作していますが、Copilot for Microsoft 365 と LLM の通信内容は暗号化されデータのやり取りは記録されません。またユーザーのデータは LLM のトレーニングや調整には使用されません。
これらの動作により、ユーザーのデータが保護されています。

LLM からの出力を受け取った Copilot for Microsoft 365 はその内容にコンプライアンスやプライバシーでの問題が無いか確認する再グラウンディングを行います(⑤)。その結果を踏まえて最終的な出力(回答)が生成され、ユーザーに示されます(⑥)。

このように Copilot for Microsoft 365 は単なる検索を行うのでも、LLM の回答をオウム返しに回答するのでもなく、ユーザーのデータの内容と LLM の機能を組み合わせて、ユーザーに最適な回答を返すように工夫されています。

Copilot for Microsoft 365 を利用する

Copilot for Microsoft 365 を利用するには

Copilot for Microsoft 365 の利用のためのライセンスは以下のとおりです。

  • 前提となるライセンス:以下のいずれかのサブスクリプションが必要です
    • Microsoft 365 Business Standard / Business Premium
    • Microsoft 365 E3 / E5
    • Office 365 E3 / E5
    • Microsoft 365 A3/A5、Office 365 A3/A5
  • Copilot for Microsoft 365 ライセンス:1ライセンスから購入可能
    • 1ユーザー年額 45,000円(税別、現時点では年額払いのみ)

Copilot for Microsoft 365 ライセンスの購入、前提ライセンスの購入やアップグレードにつきましては、当社担当営業までご相談ください。

※アカデミックライセンス(Microsoft 365 A3/A5、Office 365 A3/A5)を対象とした Copilot for Microsoft 365 ライセンスにつきましては、当社では3月18日より取り扱い予定となっております。

Copilot for Microsoft 365 を活用するには、Copilot for Microsoft 365 に知識ベースとして組織のデータ(ファイル)を認識させる必要があります。そのためには、データが以下のような Microsoft Graph のアクセスできる場所に保存されている必要があります。
・OneDrive for Business
・SharePoint Online(サイト、ドキュメントライブラリ、リスト)
・Exchange Online(メールボックス)
・Teams(チャットやメッセージ)

Copilot for Microsoft 365 を活用するには、これらの Microsoft 365 サービスを活用し、データを蓄積することが必要となります。

Microsoft Graph コネクタを利用することで Microsoft 365 以外の場所のデータを Microsoft Graph にアクセスさせることも可能です(この機能は現時点ではプレビューです)。これにより Azure 上のデータベースやサードパーティのクラウドサービス、オンプレミスのファイルを Copilot for Microsoft 365 で利用できるようになります。
Graph コネクタについて詳しくは以下を参照してください。

Copilot for Microsoft 365 の使い方

Copilot for Microsoft 365 の使い方Copilot for Microsoft 365 を使い始めるのはとても簡単です。Copilot for Microsoft 365 ライセンスが有効になると、ユーザーが利用しているアプリやサービスの画面に Copilot アイコンが表示されます。

・PowerPoint

・Word

・Excel

このアイコンをクリックすればチャットウィンドウが開くので、そこにプロンプト(指示)を記入して送信すれば、Copilot がその指示を解釈して作業してくれます。

Outlook ではメッセージを表示すると [要約] ボタンが表示され、メッセージやそのスレッドの内容が要約されます。
以下の例では元のメッセージは英語でしたが、日本語で要約されました。

またメッセージを作成する場合は、Copilot によるコーチングが利用できます。

以下に、Copilot に与えるプロンプトの例をアプリごとにいくつか示します。

なお Copilot で作業するデータについて、Word と Excel では以下のような点に注意する必要があります。

  • Excel:
    現時点では Copilot が認識できるデータはテーブルのみです。Copilot に分析・操作させるデータはかならずテーブルに変換しておきます。
  • Word:
    文章の構造(章立てや見出し、脚注など)がスタイルで設定されていると、Copilot が正しく認識してくれます。文章の要約や Word ドキュメントから PowerPoint プレゼンテーションを作成する際の精度が高くなります。
  • PowerPoint:
    スライドがスライドマスターを利用したレイアウトで作成されており、各スライドに適切なタイトルなどが入力されていると、Copilot が正しく認識してくれます。スライドに対する操作を行う際の精度が高くなります。

また Copilot for Microsoft 365 の利用時に注意として表示されますが、AI は常に正しい情報・答えを示す訳ではありません。不正確な情報や間違った内容を回答として示すこともあります。
これについては、正確な情報が含まれている Web ページの URL を示す、参考情報のデータやファイルを提供する、質問の仕方を変えた別のプロンプトを試す、などユーザー側で工夫をすることで、より正確で正しい回答を引き出すことができるようになります。

Copilot for Microsoft 365 を管理する

Copilot for Microsoft 365 は他の Microsoft 365 サービスと同様に、Microsoft 365 管理センターで管理できます。Copilot for Microsoft 365 ライセンスを導入すると、管理センターのナビゲーションに [Copilot] のアイコンが表示されるようになります。

また Copilot for Microsoft 365 ライセンスを導入するとテナントの管理者に以下のような Copilot の設定を行うように促すメールが配信されます。

このメールで [設定ガイドに移動する] をクリックすると、Microsoft 365 管理センターの以下のようなページが開きます。
ここから Copilot の使用を開始するための設置や確認、ライセンスの割り当てなどを行うことができます。

このページは Microsoft 365 管理センターの [セットアップ] - [高度な展開ガイドと支援] - [すべてのガイド] - [デバイス管理] から開くこともできます。

また Viva Insightsの Microsoft Copilot ダッシュボードで準備状況、導入、影響、ユーザーのセンチメントに関する分析情報を確認することもできます。
※Viva Insightsの Microsoft Copilot ダッシュボードは現時点ではプレビューです。またこの機能は Viva Insights ライセンスなしで利用できます。Viva Insights ライセンスの保有者にはより詳細な分析情報が提供されるようになる予定です。

Microsoft Copilot ダッシュボードについて詳しくは、以下を参照してください。

まとめ

Copilot for Microsoft 365 はユーザーの作業を大きく効率化できる、優秀な AI アシスタントです。うまく使いこなすことで資料・データ探しや見つけた資料・データの要約と分析、新しい資料の作成、メールのやり取りや Teams 会議の要約、返信の下書きなどこれまで手間が掛かっていたり、アイデアを出すのに時間がかかっていたりした作業を大幅に省力化・合理化できます。

ライフワークバランスやデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる中、オフィスワーカ、インフォメーションワーカーの業務の効率化は企業にとって避けて通れない大きな課題です。Copilot for Microsoft 365 はこの課題の解決に大きく役立つツールとなります。実際に Copilot for Microsoft 365 を利用して、その便利さを感じてください。
Copilot for Microsoft 365 ライセンスの購入、またそのベースになる前提ライセンスの購入やアップグレードにつきましては、当社担当営業までぜひご相談ください。

iDATEN(韋駄天)マイクロソフト販売支援サイト内に、Copilot for Microsoft 365 ご紹介ページを開設いたしました。随時 Copilot に関する情報を発信して参りますので、是非チェックいただけますと幸いです。

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