今さら聞けない「DHCPの基本」 連載1回目 [後編]

DHCPサーバーの課題を解決する
専用アプライアンス

「無線LANがつながらない」、「速度が遅い」、「通信が頻繁に切れる」──こうした企業の無線LANトラブルの背景の一つに、DHCPサーバーがあると解説した。ワークスタイル変革やIoTなどへの取り組みによりネットワーク通信を行う端末は急増し、DHCPの処理が追いつかなくなるケースが代表例だ。
それではDHCPサーバーに起因する課題を解消しながら、新しい取り組みを実施するにはどのような対応が必要になるのだろうか。後編ではDHCPサーバーに生じる課題を解決する製品と、その要件を解説する。

DHCP専用アプライアンス導入のメリットとは?

 安定したネットワークを必要とし、DHCPサーバーに起因するネットワークトラブルを回避したいと考える企業におすすめしたいのが、DHCP専用アプライアンスの採用だ。DHCPサービスを専用機に担当させ、従来DHCPサーバーを兼務していたWindows Serverやネットワーク機器には本来の仕事に専念させる。DHCPの処理も高速化するので、ネットワークの土台強化も期待できる。

 それではDHCP専用アプライアンスの導入によって、ユーザー企業が得られるメリットを具体的に説明していこう。

DHCP専用アプライアンス導入には二つのメリットがある

 まず一つ目に、前述したようにネットワークの土台が強化でき、ITシステム全体が安定することが挙げられる。

 DHCPに起因したネットワークの障害は、IPアドレスの割り当てがうまくできなくなること起こる。具体的には、IPアドレスの払い出しが遅くなったり、払い出しが停止したりしている状態だ。

 このような状況を引き起す要因となっているのが、DHCPサーバーの過負荷だ。Windows Serverの負荷が高まったことで、DHCPの処理が追いつかなくなり発生するのだ。加えて、大量のIPアドレスの払い出し処理を行っている間、Active DirectoryやDNS(Domain Name System)といった他のサービスにも支障が出て、二次的にITシステム全体が不安定になることも考えられる。ルーターやネットワーク機器に備わるDHCP機能を使用している場合でも、同様の要因により深刻な問題が生じる可能性がある。

 この解決策として有効なのが、Windows Serverやネットワーク機器からDHCPを切り離してアプライアンス化し、IPアドレスの払い出し処理や管理をスムーズに行えるようにすることだ。これは、かつてルーティング機能やファイアウォール機能を汎用サーバーから切り離し、汎用アプライアンスに任せるようになったのと同様の流れといえる。

新しいITトレンドへの対応にもDHCPサーバーが不可欠

 もう一つのメリットは、ワークスタイル変革やIoTといった、新しい取り組みを支える基盤としての役割が期待できることだ。今日では、企業の無線LANにPCやタブレット、スマートフォンに加えて、ウェアラブル、IoTデバイスなどさまざまな機器が接続されており、いまや無線LANは企業のクライアントネットワークの主役になりつつある。このような流れの中で、スマートフォンをIP化して内線として使ったり、Skypeなどを利用して手軽にWeb会議を開催したりといったことが当たり前になった。

 また、無線LANに接続されているのは人間が直接操作する端末だけではない。プロジェクターやプリンターなどの事務機のネットワーク接続も無線LANを介して行われているし、今後はIoTデバイスを利用して、オフィスビル内の照明や会議室などの利用頻度を計測したり、人の動きを計測して生産性を向上させる配置を検討したりといった取り組みが各社で進むことが予想されている。こうした取り組みに安定したネットワークは欠かせない。それを縁の下の力持ちとして支えるのがDHCP専用アプライアンスなのだ。

 それでは、DHCP専用アプライアンスに求められる要件とはなんだろうか。まずはWindows ServerのDHCPサーバーや、ルーターなどのネットワーク機器が提供するDHCPサーバーと、DHCP専用アプライアンスとの違いから、その要件解説していく。

Windows ServerのDHCPサーバーとの違い

 まずは、Windows ServerのDHCPサーバーとDHCP専用アプライアンスの違いについて、「パフォーマンス」に着目して解説する。

 DHCP専用アプライアンスは、DHCPサービスの提供に特化しており安定して高い性能を発揮する。一方、Windows Serverで利用するDHCPサーバーはあくまでソフトウェアベースで動作するためパフォーマンスはどうしてもWindows Serverが稼働する環境に依存する。例えばWindows ServerのDHCPサーバーへの負荷が増えれば、前述したようにActive Directoryなど同サーバーが提供している他のサービスに影響を与えかねない。その逆も言える。他のサービスの負荷が高まれば、DHCPサーバーの処理にも影響が出てしまうのだ。DHCPのパフォーマンスを担保するには、互いに影響を生じさせないよう、別のCPUとメモリーで処理することが望ましい。

ネットワーク機器が提供するDHCPサーバーとの違い

 次に、ネットワーク機器が提供するDHCPサーバーとDHCPアプライアンスの違いを見ていこう。Windows ServerのDHCPサーバーと同様に、ネットワーク機器のDHCPサーバーでも正常に処理を行うパフォーマンスは当然求められる。一般に、汎用サーバー上で動作するWindows Serverと比較してネットワーク機器は演算能力が低く、DHCPの処理をこなす余力が小さいことがほとんどだ。

 加えて、ネットワーク機器の場合は「可用性」にも着目したい。DHCP専用アプライアンスはDHCPサービスの信頼性を高める様々な工夫がなされている。一方、ネットワーク機器のDHCPサーバーでは十分な可用性を高める手段が提供されていない場合が多い。機能が限定されており、冗長構成を構築することが難しいのだ。そのため、ネットワーク機器のDHCPサーバーの負荷の増加や、部品の故障でうまく動作しなくなった場合に、ネットワーク全体が停止してしまう危険性もある。Windows ServerでDHCPサーバーを利用しているユーザーよりも、ビジネスに与える影響は大きいといえる。


 1回目となる本記事では、無線LANトラブルの隠れた真犯人DHCPと、その要因に加えて、課題を解決するために必要な製品を紹介した。第2回目となる次回では、法人企業の導入に適したDHCP専用アプライアンスと、導入によって広がるビジネスの可能性を解説する。

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