韋駄天ニュース
特別企画
「Windows11導入提案の必勝法」をITアナリストが語る - DXやセキュリティとの関連に注目 -
2023年はWindows 7 SP1 ESUやWindows 8.1のサポートも終了し、Windows 11への移行提案に取り組むべき年となります。最新の市場調査データを元に、一歩差をつけるための提案時のポイントを探っていきましょう。
DX時代においてもエンドポイント端末の導入は堅調
まずはIT市場全体の動向を俯瞰しておきたいと思います。以下のグラフは年商500億円未満の企業を対象として(以降のグラフも同様)、ハードウェア/ソフトウェア/サービスに至る25項目のIT活用分野を列挙し、「実際に導入したIT商材やソリューション」を尋ねた結果の一部です。
DXの取り組みと共に、昨今ではセンサ+AI、3Dプリンタ、ウェアラブル、ドローン、ロボットなどの新たなデバイスを活用したソリューションが登場してきています。IaaS/ホスティングを含むクラウド活用も引き続き盛んです。ですが、グラフが示すようにPC/スマートフォン/タブレットといったエンドポイント端末の導入も依然として活発であることが確認できます。クラウドネイティブと呼ばれるDX時代においてもエンドポイント端末が不要になるわけではありません。むしろ、新たなIT活用に向けて最新の端末環境を整備しておくことが大切です。
2023年以降は
Windows10からWindows11への移行が加速
以下のグラフは導入済み(青帯)および導入予定(橙帯)のエンドポイントOSを尋ねた結果です。
今後はWindows10が減少して、Windows11が増える様子がグラフから読み取れます。ですが、「導入予定」の割合はWindows 10とWindows 11でほとんど変わらないため、両者の併存が続くと予想されます。ユーザ企業とIT企業の双方にとって、2つのOSが併存する状況は管理/運用の面で負担となります。さらに2025年10月にはWindows 10もサポート終了を迎えます。できる限り、PC端末のOSはWindows 11に揃えておくことが管理/運用の面でも望ましい状態と言えるでしょう。
「Windows10のままでいいじゃない」
を打破するための提案ポイント
とは言っても、「Windows 10のままで別にいいじゃないか」と考えるユーザ企業も少なくないのが実情です。Windows 11はWindows 10から劇的に変化したわけではないため、提案するIT企業側においても、「Windows11に移行する必然性をユーザ企業に説明できない」という悩みを抱えるケースが多いようです。そこで、以降では以下の3つの観点から、なぜWindows 11への移行を進めるべきなのか?を解説していきます。
ポイント1:管理/運用の負担を軽減しないと先には進めない
ポイント2:セキュリティ確保はハードとソフトの合わせ技
ポイント3:クロスプラットフォームが求められる場面の増加
ポイント1:管理/運用の負担を軽減しないと先には進めない
以下のグラフは「エンドポイント管理/運用における課題」を尋ねた結果の上位5項目です。
「新しいOSにバージョンアップする作業が負担」(※1)の値が最も高く、この点がWindows 11の移行提案を阻む大きな要因であることがわかります。ですが、「Windows OSの自動更新を管理/制御できない」(※2)、「管理/運用を担う社内の人材が不足している」(※3)、「バージョンの異なるOSを統一管理できない」(※4)といった課題との差がさほど大きくない点に注意が必要です。Windows 10では年2回の機能アップデート(FU)が大きな負担となって、※2や※3といった課題を生み出してきました。今後、Windows 10とWindows 11の併存状態を放置すれば、さらに※4の課題も加わることになります。
一方で、Windows 11では機能アップデートが年1回となります。Windows 10も21H2以降は年1回となりましたが、Windows 11では配布サイズをWindows 10と比べて小さくするなど、管理/運用の負担を軽減する配慮がなされています。Windows 11はWindows 10とベース自体は同じであるため、移行に伴うアプリ互換性の心配も従来と比べて少なくて済みます。
ユーザ企業がDXに向けた一歩を踏み出し、IT企業がIT活用提案の幅を広げられるようになるためには、まず管理/運用の負担を軽減することが不可欠です。ユーザ企業に対しては「Windows 11はWindows 10と大きく変わらないが、それが逆に管理/運用の負担軽減ではプラスとなる」ということを説明することが重要です。
ポイント2:セキュリティ確保はハードとソフトの合わせ技
また、上記のグラフで2番目に多かったのが、「社外持ち出し端末からのデータ漏えいが心配」という課題です。今後は個々の従業員が様々なデータを様々な場所で活用する機会が増えるため、端末のセキュリティ確保も重要な取り組みとなってきます。
ですが、端末にマルウェア対策ソフトウェアを導入するだけでは十分ではありません。昨今ではハードディスクを物理的に引き抜くデータ搾取の手口なども見られ、サーバにおいても物理的なセキュリティ対策(筐体を勝手に開けられないようにするなど)に注目が集まっています。つまり、今後のセキュリティ対策はハードウェアとソフトウェアの両面から講じる必要があるわけです。こうした背景もあって、Windows 11ではTPM2.0対応のハードウェアが必須となっています。この点をWindows 11導入の障壁と捉える見方もありますが、今後は避けることのできないセキュリティ対策の常識に沿った流れであることをユーザ企業に啓蒙することが大切です。
ポイント3:クロスプラットフォームが求められる場面の増加
以下のグラフは導入済み(青帯)および導入予定(橙帯)のエンドポイント端末の利用場面を尋ねた結果です。
導入済みと比較した時の導入予定の増減を見ると、「自社オフィス内」が減少する一方で、「簡易オフィス内」「本業を担う現場」「顧客や取引先」「移動中/外出中」「従業員の自宅」といった社外の利用が増えていることがわかります。つまり、オフィス内だけでなく、工場/店舗/作業現場などを含めた様々な場面へとIT活用が多様化しつつあるわけです。こうした多様化はアプリケーションにも影響します。その結果、「作業現場向けのアプリはWindowsよりも、Androidの方が使い勝手の良いものが多い」といった状態になることも十分考えられます。こうした動きを見据えたものがWindows 11の「Windows Subsystem for Android」です。本格的な提供はこれからですが、これによってAndroid向けの様々なアプリがWindows 11で利用可能となります。このように異なるOSのアプリケーションを同じ端末上で利用できる「クロスプラットフォーム」が求められる場面は今後も増加していくと予想されます。Windows 11はそれに対応したOSを目指しているわけです。
Windows10とWindows11の
本質的な違いに着目した提案が大切
Windows 11はWindows 10との互換性の良さが強調されているため、逆に移行メリットが少ないと捉えられてしまいがちです。ですが、実際には上述の3つのポイントのようにDX時代を見据えた進化を遂げていることがわかります。こうした本質的な違いをユーザ企業に啓蒙することが、今後のエンドポイント端末の導入提案では非常に大切となってきます。
サーバOSのバージョンアップ提案も忘れずに
ここまではWindows 11単体での提案ポイントを説明してきましたが、サーバOSとの兼ね合いも押さえておきましょう。2023年10月にWindows Server 2012が延長サポート終了となりますが、新しいサーバOSではWindows 11との組み合わせでファイルサーバ用途での処理を高速化するSMB Compression(Windows Server 2022以降)やサーバのみで拡張性の高いストレージ環境を実現する「S2D」(Windows Server 2016以降)など、ユーザ企業の業務改善に寄与する機能強化が図られています。サーバOSの進化を理解しておくことも、Windows 11導入提案を成功させる上で非常に有効です。
ユーザ企業から選ばれる販売店となるためには
2023年以降もユーザ企業を取り巻くビジネス環境は厳しい状況が続くと予想されます。そのため「とにかく安く購入できる販売店を選ぶ」という判断を下すユーザ企業も出てくるかも知れません。そこで、ご覧いただきたいのが以下のグラフです。これはユーザ企業に対して、IT活用における最も主要な委託先/購入先(=販売店)をどのような点でプラスに評価しているか?を尋ねた結果の中から代表的な項目を示したものです。
「資金調達の支援」を挙げるユーザ企業は1割未満に留まる一方で、「セキュリティやトラブルの一括対応」、「DX推進に役立つ新しいIT商材提案」、「複数メーカの保守/サポート」といった点が重視されていることがわかります。つまり、ユーザ企業が販売店に求めているのは、金銭面での支援ではなく、「多岐に渡るIT商材をきちんと提案/保守できるか?」という点であるわけです。
国際情勢の変化などによって、今後も半導体不足が深刻化する可能性は多々あります。そうしたリスクを見越して、調達面も含めた体制を整備しておくことも「ユーザ企業から選ばれる販売店」に求められる重要な取り組みの一つと言えそうです。
筆者略歴:株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト
岩上 由高(いわかみ ゆたか)博士(工学)
ITアナリスト歴15年目。ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ITベンチャー企業数社でシステム開発/運用、プロダクトマネージャ、CTOなどの経験を積む。そこで培った知見と人脈を生かしながら、幅広いIT活用分野における市場調査とコンサルティングに従事。
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