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商談を成功させるAutoCAD提案のキモ
矢野経済研究所が実施した「CAD/CAM/CAE システム市場に関する調査結果 2015」によると、CAD 市場は土木・建築系、機械系ともに好調を維持する見通しだ。この波に乗じて、CAD ソフトの提案を進めていきたいものだ。本企画では、CAD 市 場で絶大な支持を得ているオートデスクの「AutoCAD」「AutoCAD LT」について、改めて提案のポイントを探っていく。
建設業者から機械メーカーまで利用者層は幅広い
設計ツールとして30年以上の歴史を持つAutoCADシリーズは、3D設計 / 2D製図が可能な「AutoCAD」と、2D製図が可能な「AutoCAD LT」に分けられる。ビルや家屋などの建築設計、橋梁やダム、道路などの土木設計、機械設備などの電気制御設計、機械製品のメカニズムを設計する機械設計など、設計における幅広い分野で活用されており、建設業者、建築設計事務所、建設コンサルタントから通信インフラ事業者、機械メーカーまで製図をともなったデザイン作業を行う業種で利用されている。
AutoCADは3Dと2Dの両方のデータの取り扱いが可能で、コンセプトモデリングや3Dのビジュアライゼーション、アニメーション、カスタマイズ、3Dプリント用のSTLファイルの作成などが可能だ。一方のAutoCAD LTは2D作図に機能特化しており、AutoCADよりも手軽に購入できる価格設定が大きなメリットである。
両製品の提案ポイントはずばり3Dやカスタマイズのニーズがあるかどうかによる。AutoCADでは、3Dモデルによる設計やレンダリング、アニメーションによるビジュアライゼーションが可能になる。また、独自の設計用途に合わせてカスタマイズできる点も選定のポイントになっている。特定の用途や目的に応じた設計プログラムを組み込んでおけるのだ。 AutoCAD LT はAutoCAD の2D の製図機能だけに特化したソフトだ。AutoCADのデータを欠落することなく引き継ぐことはできるが、3Dでの表現はできない。しかし、3Dの本格設計は行わないが業務上図面が必須となる職種は非常に多く、AutoCAD LTはシリーズ中で最も多くのユーザーを獲得している。
AutoCAD とAutoCAD LT の導入傾向については、企業規模ではなく用途に依存している。大企業でも2Dの製図で十分という場合はAutoCAD LTを選択している。一方、中小企業であっても3Dモデリングが必要な場合は、AutoCADを導入している。また、同じ企業内でも、AutoCAD とAutoCAD LTを担当作業に応じて使い分けているケースもある。
フリーソフトユーザーにリプレース喚起
AutoCADとAutoCAD LTは、これまでも多くのユーザーを獲得してきたが、利用していないユーザーもまだまだ少なくない。フリーのCADソフトを導入しているユーザーも多いのだ。
ただし、フリーソフトにはフリーならではの弱点がある。例えば、フリーのCADソフトを使っている場合、ほぼ業界標準となっているAutoCADのTrusted DWG形式で保存する際に変換の手間が発生してしまう。フリーソフト上で変換できない場合は、クライアントに作業を行ってもらうような事態も生じてしまうだろう。AutoCADやAutoCAD LTを利用して最初からDWG形式のファイルで設計すれば、こうした業務上の手間を排除できる。
またフリーのソフトは、いつまで提供されるかわからない不安定な部分もある。ソフトの提供が急に終了してしまったら、データを急いで作り直さなければならなくなってしまう。大変な作業だ。一方、30年以上継続して提供されていて、世界中に多くの利用者が存在し、さらにデータ形式も業界標準にまで成長したAutoCADやAutoCAD LTならば、そうした心配がない。
PC やタブレットとセットで提案
2016年3月21日から提供が開始された最新版の「AutoCAD 2017」「AutoCAD LT 2017」によって、AutoCADはさらに魅力的な提案が可能になった。例えば、製品のアップデートや修正モジュールの適用などを自動で行えるようになっている。これでアップデートの確認を手動で行う必要がなくなった。
機能的な部分では、PDFの図面を読み込む際に、AutoCADで編集可能なオブジェクトとして取り込めるようになった。ラスターイメージ、線種や画層の取り扱いなどを柔軟に指定できるため、PDFをもとに図面を作成する作業量が大幅に軽減される。設計業界ではPDFの図面がやり取りされることは非常に多い。そして、そのPDF図面を参照して設計を行うケースもまた多い。そのため、新たに搭載されたこの機能の訴求力は絶大なものになる。
製造系のユーザーにアピールしたいのは、自動調整中心線の機能だ。例えば、ナットとボルトの中心点を合わせるなど、各オブジェクトの中心線や中心マークの作成や編集が非常に簡単に行えるようになっている。
GPUを利用した2D、3Dそれぞれのグラフィクス表示の性能も向上させている。GPUでの線分生成やGPUでのキャッシュ利用を実現することで画面移動を高速化し、同時に消費メモリーの低減や画面操作時のフレームレートの調整を可能にした。GPUを活用した機能強化は、GPU搭載PCとのセット提案を促進できそうだ。
クラウドサービスである「A360」(ビューワー・保存・共有)や「AutoCAD 360」(コラボレーション)との連携も強化され、外出先や現場での設計データの確認や修正などが手軽に行えるようになった。これは、タブレットなどのスマートデバイスやモバイルPCとのセット提案の良い契機になるだろう。
用途に特化したSuite 製品にも商機あり
業界向けの製品がセットになったLT Suite製品にも商機がありそうだ。特にAutoCAD LTシリーズのSuite製品は、現状では認知度がそれほど高くないため、多くの潜在ニーズが期待できる。用途に特化しているため提案のしやすさも特長だ。
LTシリーズのSuite製品は「AutoCAD Revit LT Suite」「AutoCAD Inventer LT Suite」「AutoCAD LT Civil Suite」の三つがラインアップされている。AutoCAD Revit LT SuiteはAutoCAD LTとBIM(Building Information Modeling)ツールの「Revit LT」がセットになったSuite製品だ。Revit LTで3Dモデルを使って建築設計を行い、モデルから図面が自動的に生成される。さらに詳細な図面を作成する場合にRevit LTからDWGで書き出してAutoCAD LTで図面を仕上げるという生産性の高いワークフローが実現できる。
Revit LTは意匠設計に特化したBIMツールだが、意匠設計、構造設計、設備設計に対応する「Revit」とは100%ファイル互換なので、例えば同じ事務所内でRevitをメインツールにしてRevit LTをサブツールと位置づけた分業が可能になる(ただしRevit LTはワークシェアリングには非対応)。
部品設計や電子納品用図面データ作成に特化
AutoCAD Inventer LT Suiteは、AutoCAD LTと3Dの部品設計CADソフト「Inventer LT」が同梱される。Inventer LTで部品の3Dモデリングが行え、AutoCAD LTでその2D図面を 作成できる。製造業における部品設計者向けのSuiteだ。
AutoCAD LT Civil Suite は、AutoCAD LT と電子納品用の図面データ作成ツール「Cals Tools」が同梱される。公共事業で定められているSXF形式の電子納品データを手軽に作成できるため、主に土木設計における電子納品用のSuiteとなる。
単体製品、Suite製品それぞれのポイントを押さえておけば、これからオリンピックや新しいものづくりの動きに合わせて拡大するCAD市場で、多くのビジネスチャンスを創出できるはずだ。
(PC-Webzine 2016年4月号掲載記事)
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