[ DIS Innovation Forum ] パネルディスカッションレポート 第5回

ドローンBizのハイパーなカタチ
-ドローン産業の最先端・NewTrendセッション-

株式会社かもめや 代表取締役社長 小野正人氏

株式会社かもめや 代表取締役社長 小野正人氏

ルーチェサーチ株式会社 代表取締役社長 渡辺 豊氏

ルーチェサーチ株式会社 代表取締役社長 渡辺 豊氏

モデレーターを務めたドローン・ジャパン株式会社 取締役会長/セキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏

モデレーターを務めたドローン・ジャパン株式会社 取締役会長/セキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏

空から陸上、水上、水中にフィールドが拡大

 モデレーターを務めたセキュアドローン協議会で会長を務めるドローン・ジャパンの春原氏は国内のドローン市場について調査資料を示して説明した。

 市場規模は2022年に向けて現在の4倍以上に拡大すると予測されている。その内訳として機体の販売がそれほど伸びないのに対してサービスが急拡大することを示し、サービス別市場規模について解説した。

 2020年度のサービス別の予測を見ると農業が最も大きく次に検査、測量、屋内、防犯、災害調査、物流、空撮などとなっている。こうしたデータを示しながら春原氏は2017年度から2019年度はドローンの普及期となると話した。

 そして今後はi-Constructionなど各業界でのデジタルトランスフォーメーションが進展することで、ドローンの用途が拡大すると強調する。

 さらに現在は飛行型のドローンが主流だが今後は陸上型のローバーや水上および水中を航行するドローンも増えて活用できるフィールドが広がり、周辺ビジネスを含めた市場規模が拡大すると説明した。

陸・海・空で無人物流の実現を目指す

 続いて実際にドローンを活用してビジネスを展開している中四国の企業、かもめやとルーチェサーチのサービスが紹介された。

 かもめやではドローンを使って瀬戸内の離島に物資を運ぶサービスの提供を目指して実証実験に取り組んでいる。また同社ではドローンによる空輸に限らず陸上と海上でもドローンを利用し、これらを組み合わせて24時間365日どこに住んでいてもモノが届く「陸・海・空 無人物流プラットフォーム」を構想している。

 その意義についてかもめやの小野氏は離島の生活には海上の物流や交通が不可欠だが、定期航路が減少しており将来はなくなってしまう可能性もある。また過疎化が進んでおり買い物弱者(自宅から生鮮食料品販売店までの距離が500メートル以上)も増えている。

 さらに物流事業者が離島にサービス提供するには人手不足や高コストという課題があり、継続できるかどうか不透明だ。こうした離島の課題は島国日本の縮図であり、数十年先には本土でも同様の問題に直面することになると強調した。こうした社会課題を解決するために陸・海・空 無人物流プラットフォームを実現する必要があると説いた。

 その実現に向けて同社はマルチローター型ドローンによる長距離海上物資輸送の実験や飛行機型ドローンによる医薬品の配送の実験、船型ドローンの開発、さらに陸・海・空を統合した運行管理システムの開発などに取り組んでいる。

 続いてルーチェサーチの渡辺氏が同社のドローン事業について説明した。同社では主に測量に向けてドローンソリューションを提供しており、ドローンの設計から製造、測量、データ処理まで一貫して内製できることをアピール。機体開発についてはレーザー計測機能や写真測量機能をはじめ長時間飛行、長距離飛行などさまざまな機能や性能を実現した実績がある。

 渡辺氏は測量を高速な飛行機で行うよりもドローンで行うほうが精密に計測できると説明。人手をドローン化すると短時間で高密度な測量が低コストでできるようになる。IoTとドローンは親和性が高いが、できることが多いためニーズの提案が欲しいと会場に訴えた。

ますます広がるドローンの活用領域

 春原氏は政府では未来投資戦略2017においてSociety 5.0の実現に向けた改革を推進しているが、その中の「i-Construction」の項目で2019年までに橋梁、トンネル、ダムといった土工・舗装等以外の工種や維持管理を含むすべてのプロセスにICTを活用することが明記されており、その具体策の一つとしてインフラ点検や災害対応でのロボット、データの活用が示されている。これを踏まえて今後ドローンの活用がいっそう広がると語った。

 その事例としてまず今後も活用が続けられるメガソーラーのパネルの点検・管理を同社のドローンで実施することで、パネルの温度を可視化して異常を検出するテクノロジーが紹介された。

 続いて農業の効率化、省力化に向けたドローンの活用例として農薬・肥料・水の自動散布を紹介した。農場の地面の水分量や地質、病害虫、作物の育成状況などをセンサーでデータ収集し、それらをAIで分析して状況に応じて自動的にドローンが農薬や肥料、水を散布する仕組みだ。

 最後に春原氏はドローンやセンサーで収集したデータを川下にも展開してマーケティングの判断に活用するべきだと提言。さらにドローンビジネスは都市部よりも地方に需要がある。地方・地域の課題を把握して解決・創生に貢献できる活用を検討して欲しいと締めくくった。

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