クラウドとオンプレの「いいとこ取り」!ハイブリッドクラウドのススメ

 AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やMicrosoft Azureといったパブリッククラウドの利用が急速に進む中、一方で企業内にサーバーなどの資産を置くオンプレミス環境の見直しも始まっている。コンピューティングの世界を思い返すと、ホストなどを中心とした中央集権型のシステムとクライアント-サーバーのような分散型のシステムでは、時代によってそのトレンドは双方の間を行き来してきた。クラウドとオンプレミスも、これと同様にどちらかに振り切れるのではなく、適材適所でその間をバランスして利用することを考えることが肝要だ。

 そうした中でクラウドとオンプレミスを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」が注目されている。ハイブリッドクラウドの特徴は、クラウドとオンプレミスの「いいとこ取り」をすることだ。まずはクラウドとオンプレミスの特徴からおさらいしていこう。

クラウドの利点、オンプレの利点は相反する

 まずクラウドのメリットを見ていく。第1に、導入コストを抑えられることが挙げられる。クラウドの利用では、自社にシステム環境を構築、所有しなくて済むため、初期の導入コストが低く抑えられる可能性が高い。第2に、クラウドではデータセンターの環境をレンタルして使用するため、同様に自社でシステムを構築しなくて済むことから、システムの導入を短期間で終わらせることができることがある。

 運用時点のメリットもある。第3に挙げられるのが、運用コストの低減。自社で設備の管理、維持をする必要がなくなり、月額課金などの料金体系で用途と使用量に応じた支払いをすれば良いため、設備の維持管理に人件費が直接かかってくるオンプレミスよりも低コストで運用できる可能性が高い。また第4として拡張性の高さもポイントだ。提供するサービスの急な拡大によってCPUの能力やメモリー、ストレージの容量が不足しそうになった場合、クラウドならばサービスの範囲内で拡張が可能だ。オンプレミスではこうした拡張性への急な対応に時間がかかるため、オンライン環境があれば場所を問わずに利用できる形態も、クラウドのメリットといえる。

 一方でデメリットもある。システムの環境をベンダーに依存することになり、メンテナンスや障害対応もベンダーの対応に委ねなければならない。コスト面でも、導入コストを低く抑えられる半面、大企業などで利用が多いと月額料金がかさみ、一定期間を過ぎるとオンプレミスのコストの積算を上回ることもある。さらに、ベンダーのサービスの範囲でしかカスタマイズができない可能性があること、インターネットなどオンライン環境に障害が生じると利用できなくなること??といったデメリットも想定しておく必要がある。

 それでは、オンプレミスのメリットはどうだろうか。第1に、セキュリティが強固であることは誰もが感じるところだろう。社内ネットワークを利用してシステムを構築するため、インターネットなどを介するリスクが軽減できる。自社のセキュリティポリシーに合わせた環境構築も容易だ。第2に、自社システムならではのカスタマイズ性の高さが挙げられる。自社に最適な環境を構築しやすいだけでなく、既存のシステムやソフトウエアなどとの整合性を取ったオリジナルの統合システムを構築しやすい。第4に、インターネットに障害が発生してクラウドの利用が困難な場合でも、社内ネットワークの利用によってシステムの運用を継続できる点が挙げられる。

 オンプレミスのデメリットは、クラウドのメリットの裏返しになっている。導入費用が高額になりがち、導入期間が長くかかる、平常時のランニングコストが継続してかかることに加え、システム部門にエンジニアが必要になるといった人材確保の問題も生じる。

双方のメリットを活かせるハイブリッドクラウド

 こうした中で、クラウドとオンプレミスの長所を融合させたシステム形態の「ハイブリッドクラウド」が注目されている。スピードとコストを重視するクラウドと、安定性や信頼性を重視するオンプレミスは、それぞれがメリットを持っていて、デメリットはちょうど相反する。従来オンプレミスで運用していたシステムを、すべてクラウドに移行するとなると、クラウドのメリットは得られる半面で、移行のためのシステム調整やセキュリティ確保などの負担が増える。かといって、オンプレミスでスピード重視のシステムを構築するとなると新規システムの導入コストは膨大になる可能性がある。
 ハイブリッドクラウドの考え方は、システムの目的や取り扱うデータの種類などに応じて、クラウドとオンプレミスを選択して組み合わせて利用するというもの。AWSやAzureなどのパブリッククラウドでは拡張性を求められるような情報の処理を行い、物理的なサーバーへの保存が必要な高いセキュリティを求められる業務や、過去のシステム資産を引き継ぐために容易にクラウド化ができないような業務はオンプレミスで行うといった使い分けで、双方の「いいとこ取り」ができる。

 TCO(Total Cost of Ownership)の観点からも見逃せない。インテルの調査によれば、70%ものITプロフェッショナルが「ハイブリッドクラウドは向こう2年間の戦略的なエンタープライズITの手段」と答えている。そして96%の経営層が大きな変化をもたらすことをに期待を寄せる。実際に、ハイブリッドクラウドを導入した企業は平均して約24%のITコスト削減に成功した。

 ハイブリッドクラウドを構築する際には、業務に応じたシステムやデータの特性を良く理解して、クラウドとオンプレミスをどの範囲で適用するかを見極めることが最も大切なポイントになる。また、オンプレミスのサーバーと一口に言っても、その設置形態はオフィスやサーバールーム、データセンターへのホスティングなど多岐にわたる。パブリッククラウドとの連携や統合管理の方法を考えて、オンプレミスのサーバーの設置形態やクラウドとの接続形態などを検討する必要もある。

 ハイブリッドクラウドの考え方が進展する中で、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品への注目も高まっている。HCIとは、オンプレミスのサーバーにサーバー仮想化ソフトのハイパーバイザー、ストレージ仮想化ソフト、運用管理ソフトなどを導入したもの。「クラウドのように柔軟に利用できるインフラをオンプレミスで整備する」ことが可能になり、パブリッククラウドを使いにくいシステムやデータを取り扱いやすくなる。「時代はクラウドだ」「オンプレミスの復権だ」といった両極端に走るのではなく、適材適所にクラウドとオンプレミスを配したハイブリッドクラウドを今後のシステム構築の1つの柱に据えると良いだろう。

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