AI技術の進化で拡大するサーバー需要 Windows Server 2025の登場でリプレースも加速 顧客のリプレース需要を満たすサーバーをご紹介

自社専用の生成AIを稼働させるインフラを構築する際、クラウドサービスに企業データを上げたくないと考える企業がいるだろう。その課題を踏まえ、オンプレミスに生成AIのインフラを構築する企業が出てきている。果たして生成AIの推進によって、国内のサーバー需要にはどのような変化が出てくるだろうか。本記事では国内のPCサーバー需要の現況や今後の展望について、MM総研に話を伺った。

サーバーの平均単価は上昇傾向

MM総研は2025年6月30日に「2024年度国内PCサーバー出荷台数調査」を発表した。なお本調査におけるPCサーバーは、32bitベースの汎用CPUと汎用OSを組み合わせた企業向けサーバーを指している。また、メガクラウド事業者などがODMメーカーなどから調達する自社専用設計のPCサーバーは含んでいない。この前提を踏まえ、2024年度のサーバー出荷台数は前年度比7.6%減の31万6,343台となり、2018 年度から6年連続で減少する結果となった。この結果を基にMM総研 取締役 研究部長 中村成希氏は、昨今のPCサーバー市場のトレンドをこう話す。「クラウドの利用が増えていることもあり、サーバーの台数は減少傾向にあります。
サーバー需要は『Microsoft 365』や『Google Workspace』をはじめとしたSaaSアプリケーションに食われている状況です。出荷台数の変化を見ていくと、2013年度は53万3,012台だったものが、2024年度は31万6,343台まで減っています」

一方、2024年度の国内PCサーバー出荷金額は、前年度比5%減の2,697億円だった。2021年度以来3年ぶりの減少となったものの、年間2,500億円以上の規模を維持する結果になっている。また、2024年度の平均単価は85.3万円で、上昇傾向が続いている。この理由を中村氏は以下のように語る。「2013 年度の平均単価は44.5 万円なので、2024 年度では倍近い金額になっていることが分かります。出荷台数の推移と照らし合わせてみると、顧客が求めるサーバーの台数は減っているものの、より高性能かつ大容量なサーバーを必要としている現状が見えてきます」

続けて中村氏は、ここ数年のPCサーバーの出荷金額の変遷をこう分析する。「2024年度の出荷金額は前年度比5%減となりましたが、これはリプレースサイクルの谷に入っていたからだと考えています。ハイエンドサーバーを中心に単価は上がってきているので、需要自体は堅調に推移するのではないでしょうか。また2026年度は、Windows Server 2016の延長サポートが終了する2027年1月12日に合わせて、サーバーの買い替えが起きるとみています」

サーバーの需要は今後も残る

Broadcomによる買収に伴うVMware製品の値上げも、PCサーバー市場にインパクトを与えたと中村氏は話す。「仮想化ソフトウェアの値上げは全体の値上げに関わるので、インフラを更新するタイミングで値上げがあると、企業がオンプレミスの資産を維持していくハードルが上がります。企業としては非常に頭が痛い状態になるので、サーバーリプレースの阻害要因になっています。ですが一部のユーザー企業では、ほかの仮想化ソフトウェアに移行して、VMware製品の値上げを回避する動きが出てきているんですね。この動きを取るユーザー企業は確実に増えています。そのためVMware製品の値上げはマイナスのインパクトが大きい一方、ほかの仮想化ソフトウェアのニーズを増やし、オンプレミスの需要を底支えする要因にもなっています」

続けて中村氏は、昨今の企業のオンプレミス事情をこう語る。「2010年代の中ごろからクラウドの活用が本格化し、コロナ禍をきっかけに活用の傾向がより強まってきました。現在はクラウドファーストの考え方が浸透し、従来はオンプレミスで組んでいたメールサーバーなどもクラウドへ移行するようになっています。ですが全てをクラウドに移行せず、オンプレミスを残している企業もいます。例えば顧客情報や調査資料、開発資料など、企業の財産と呼べるデータはオンプレミスで管理したい意向を持つ企業があるのです。そのため、オンプレミスは今後も残ると考えています。ほかにもコストパフォーマンスを考えたときに、クラウドとオンプレミスで差がないため、オンプレミスでデータを持ち続けるケースもあります。こうした状況を踏まえると、クラウドファーストの時代でもオンプレミスサーバーの需要は残ると思っています」

こうした事情も踏まえ、MM総研では2025年度のサーバー出荷台数を29万8,960台と減少を予測している。一方、出荷金額はほぼ横ばいの2,678億円、平均単価は89.6万円と引き続きの上昇を見込む。「ストレージやメモリーの要求が高くなってきているので、引き続き平均単価は上がるとみています」(中村氏)

2024年度国内PC サーバー出荷金額および平均単価実績と予測出所:MM総研

※ 2025年度は予測値。

MM総研 取締役 研究部長 中村成希 氏

MM総研
取締役 研究部長
中村成希 氏

GPU 搭載サーバーが市場拡大に寄与

さらに中村氏は、「今後のPCサーバー市場を語るには、AIの話をしなくてはなりません」と切り出す。「自社独自の生成AIや、オープンソースのものに独自のカスタマイズを加えた生成AIを、オンプレミスで活用したいニーズは確実にあります。生成AI活用で問題になってくるのが、データの置きどころです。自社のコアデータを学習対象にし、それを推論してビジネスに生かしたいものの、パブリッククラウドにコアデータは置きづらいという懸念が出てきます。そうした考えを持つ企業向けに、今後かなりの数のGPU搭載サーバーが出てくるのではないでしょうか。GPU自体の単価が高いこともあり、GPU搭載サーバーは市場を押し上げる要因になると考えています。AI用途のサーバーをオンプレミスで使うことが当たり前になってくると、出荷金額は3,000~4,000億円を突破してくるでしょう」

この話を踏まえて中村氏は、「企業の投資状況やGPUの進化速度などさまざまな事柄が絡むので、まだ明確に報告を出すことはできませんが」と前置きした上で、今後の市場予測をこう語る。「現在のAIの利活用や開発状況を見ると、PCサーバー市場は2026~2028年度の間にもう一段階大きく成長する可能性があります。出荷金額がいきなり3,000億円に達してもおかしくないでしょう。今までもAI技術を使っていたにもかかわらず、ここ数年で大きな市場成長が見込める要因は、生成AIのカスタマイズが実現できているところにあります。オープンソースのAIに自分たちのデータを学習させ、カスタマイズした生成AIを使うことが、極めて現実的にできるようになっているのです」

また、今後のサーバーニーズについて「製造業や物流業、交通・電力・公共施設・医療といった社会インフラ業では、エッジにサーバーを置いてデータ活用を行うケースが増えてきています。今後もこれらの業種においては、サーバーのニーズが増えていくと考えています」と中村氏は話す。

最後に中村氏は、今後のサーバー提案について、販売店に次のようにメッセージを送った。「オンプレミス回帰がキーワードとして挙がってきたときがありますが、今年以降はクラウドとオンプレミスの融合が始まってくると考えています。どの企業も自社の財産となるデータを所持しています。そのデータをどう生かすのが一番良いかという提案は、販売店がしなければなりません。顧客のデータ資産の管理にオンプレミスが必要であれば、クラウドだけではなく、オンプレミスを含めた提案をしていく必要があります。クラウドを含むネットワークの提案とオンプレミスの提案をぶつ切りにせず、両方合わせてハイブリッドに提案できる販売店が求められています。そしてハイブリッド提案を進めていくに当たって、クラウド環境のセキュリティ担保に関する提案も、販売店が企業規模を問わず行っていく必要があります」