学校の環境や使い方を優先した文教タブレット 富士通Windowsタブレット「ARROWS Tab Q506/ME」

  富士通株式会社は2015年10月、文教専用の10.1型Windowsタブレット「FUJITSU ARROWS Tab Q506/ME」を発表した。同製品は、国内の文教向けハードウェア市場で高いシェアを誇る富士通が、初めて“文教タブレット”として発売したもの。今後、多くの教育機関で本格化する情報端末の一人1台環境に向けて、教育現場で求められる使い勝手や壊れにくさを重要視したタブレットを開発した。製品に関する詳しい話を富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部 タブレットプロダクト統括部 第一プロダクト部 部長 柳谷麻理氏とマネージャー待鳥俊樹氏に聞いた。

富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部 タブレットプロダクト統括部  第一プロダクト部 部長 柳谷 麻理氏とマネージャー待鳥 俊樹氏

富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部 タブレットプロダクト統括部 
第一プロダクト部 部長 柳谷 麻理氏とマネージャー待鳥 俊樹氏

高いシェアだからこそ得られた多様なフィードバックを製品開発に生かす

 「FUJITSU ARROWS Tab Q506/ME」(以下、ARROWS Tab Q506)は、国内の文教向けハードウェア市場で高いシェアを誇る富士通が、初めて“文教タブレット”として発表した製品。高いシェアであるからこそ得られた現場からの多様な意見を生かして、教育現場で求められる“使いやすさ”や“壊れにくさ”を追求した。

 富士通株式会社 ユビキタスビジネス戦略本部 タブレットプロダクト統括部 第一プロダクト部 部長の柳谷麻理氏は、「様々な教育現場を見ていると、子供と大人ではタブレットの使い方がかなり異なるほか、学習用途としてタブレットを使う際は、ビジネス用途と求められるものが違うことを実感した。ARROWS Tab Q506/MEは、そうした教育現場からの独特の要望を多く取り入れて製品化した」と開発の経緯を語る。

柳谷 麻理氏

柳谷 麻理氏

ARROWS Tab Q506/MEの開発にあたり、最も重要視したコンセプトは「学びの多様化に対応したタブレットであることだ」と語るのは、同部のマネージャー待鳥俊樹氏。教育現場におけるタブレット導入は、今までコンピュータ教室でしか使えなかった情報端末の利用が、普通教室、特別教室、体育館、校庭など、学校の様々な場所に広がる。

学習においても、これまでの一斉授業に、アクティブ・ラーニングやアダプティブ・ラーニング、反転授業などの新しい学びが取り入れられる。

ARROWS Tab Q506は、文教タブレットとして、下記の3つの特徴があるという。

待鳥 俊樹氏

待鳥 俊樹氏

文教タブレット3つの特色 その1「多様な学びに対応した仕様」

  ARROWS Tab Q506/MEは、横長の10.1インチサイズ。教室の机に教科書、ノート、筆箱を置いても、タブレットが収まるちょうど良い大きさだ。とはいえ、学校の机は小スペースであるため、机からの落下を防ぐためにタブレットに接続したキーボードの底面にゴム足を付けた。仮に小学校の机の高さである76cmから落下しても、四角を強化するなどで衝撃を吸収しやすい設計なので壊れにくい。

四角を強化するなどで衝撃を吸収しやすい設計

 小学校などを中心に教育現場では手書き入力をする機会も多いが、書く時にいちいちタブレット部を外してキーボードに重ねるのは手間だ。教育現場からこのような要望を受けてARROWS Tab Q506は低重心設計にし、タブレットを付けたまま手書き入力ができるようにした。従来のタブレットよりも画面を後ろに倒せる角度が広がり、なおかつタブレットも倒れにくいという。
待鳥氏は、「細かい点ではあるが、机の小スペースでタブレットを活用した学習をスムーズに行うためには、こうした工夫が欠かせない」と話す。

“動画撮影をする時に、話す相手の音声をきれいに録音したい”という現場からの声にも対応した。例えば、小学生の社会科の授業で街に出てインタビューをしたり、中学や高校ではプレゼンテーションの姿を動画で撮影したりするといった学習シーンでは、せっかく話した内容が音声として聞きづらいことがある。
ARROWS Tab Q506/MEは、そのような要望に応えて相手側と自分側の両方の声が録れるように天面にマイクを内蔵した。柳谷氏は「このような使い方は、教育機関独特のもので現場の先生の意見に耳を傾けたからこそ製品化に反映できた点だ」と説明する。ほかには、教室の外で使用することを考慮して防水・防塵であることや、左利き、右利きの子供に対応するなど、教育機関ならではの多様なニーズが反映されている。

文教タブレット3つの特色 その2「発信力とコミュニケーション能力の向上」

 ARROWS Tab Q506/MEでは文教タブレットとして、思考の可視化やコミュニケーションの活性化を目的としたICTの利用に特色のある機能を搭載している。

  • 鉛筆と同じ感覚で書ける「Pencil Touch」(ペンシルタッチ)

ARROWS Tab Q506/MEでは、授業中のタブレット活用のひとつとして、自分の考えを書き込み、瞬時に共有するような思考の可視化を目的とした利用が多いことから、ペンの性能にこだわった。

ARROWS Tab Q506の手書き入力は、書き始めの位置がずれることなく、ねらったところから書き出しが可能だ。ペン先の動きに遅れることなく、書いたものが表示される追従性も高い。柳谷氏は、「現場の先生は書き心地にこだわりのある方が多く、漢字テストや百ます計算にも使用してもらえるレベルにまでこだわって製品開発をした」と説明する。また、ペンをタブレットに差し込む際、今まではペンの向きが合わせられず無理矢理タブレットの差し込み口に入れてしまうといったこともあり、表裏を意識せず差し込めるようにした。さらにオプションで鉛筆との同じ六角形になっているペンを用意しているとこともポイントだ。

鉛筆と同じ感覚で書ける「Pencil Touch」(ペンシルタッチ)

瞬間を記録することが多い教育現場に最適なカメラ

写真と動画の利用が多いのも教育機関ならでは。体育の時間に跳び箱のフォームをカメラで撮影したり、実験や観察の過程を写真に撮ってレポートにまとめたりするなど、カメラを使うシーンは多い。

ARROWS Tab Q506では、薄暗い体育館でもぶれずに速い動きを撮影できる。カメラのスポーツモードを選べば、シャッターを押した瞬間の動きが記録できる。待鳥氏は「今後はさらに写真や動画を使う学習シーンも増えることから、さらに教育現場の使い方や特性にあったカメラを製品改良していきたい」と語る。発表や情報共有など、相手に伝える学習シーンでは写真や動画の利用が有効だ。鮮明なイメージがあることで、児童生徒が自信を持って説明でき、比較・検討がしやすいなどの利点もある。写真や動画の教育的利用には瞬間の記録をぶれずに残せることが重要だと考えている。

文教タブレット3つの特色 その3「授業が止まらない環境を提供」

 教育機関でのタブレット活用で、現場の教師が最も重要視していることは“授業が止まらない”ことであろう。せっかくタブレットを導入しても、授業が止まってばかりでは本末転倒。富士通も同様に考えており、“待たせない、手間をかけない”をコンセプトにした導入・活用・保守の盤石なサポートを提供している。

なかでも注目したいのは、ARROWS Tab Q506に搭載された、子供が自分で端末の不具合を確認できる「端末診断ツール」だ。児童生徒はもちろん、教師や支援員がその画面を見れば、何が原因で端末に不具合が起こっているのかが分かるという。例えば、授業中に多いのが無線LAN接続の不具合によってソフトなどの動作が停止すること。大抵の場合、ネットワークの接続不良が多いが、児童生徒はその都度、教師や支援員を呼び、どうすれば良いのか指示を待つ。結果として授業が止まってしまいがちだ。そんな時に、児童生徒が自分で端末診断ツールを見て、何が原因で不具合が生じているのかを判断し、修復できるようにした。

「端末診断ツール」

また、小中学校で多いのが不十分な充電がもたらす授業への影響。小中学校では、充電保管庫にタブレットを収納することが多いが、きちんと本体とケーブルが接続されないまま、いざ授業でタブレットを使用する際に充電が足りず使えない児童生徒がいる。
その都度、予備機を取りに行ったり、支援員を呼んだりするなど授業が止まる原因になることから、ARROWS Tab Q506では保管庫に入れた際にきちんと充電されているかを一目で確認できるLEDランプを搭載している。

今後の展開として柳谷氏は、教育機関でタブレットの1人1台環境が進めば、学校だけでなく、家庭や通学途中など、よりいっそう子供がタブレットを使用する場面が増えていくと予測している。
あくまでもタブレットはツールであり、使うことが目的ではないが、「様々な学習場面や学び方の変化に対応できるタブレットを提供していきたい」(柳谷氏)と抱負を語る。

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