DIS教員向け研修サービス。確実なステップアップで適切な授業デザインを可能に

 2020年までにすべての小中学校で1人1台のタブレット端末を導入した授業を実現するという国の目標のもと、現在、全国の小中学校では、ICTの導入や検討が進んでいる。ICT教育では、子どもたちにどのような効果があるのか、どんなことが可能になるのかなど、「子どもの教育にとってのICT」という論点で語られることが多い。もちろん、それが本筋ではあるのだが、もう1つの大切なポイントが忘れられがちだ。子どもたちを牽引する教員が、どのように活用するかだ。ダイワボウ情報システム(以下 DIS )文教グループで教員向け研修サービスを担当する西崎主任に現状の教員のICTスキルや今後必要とすべき研修について話を聞いた。

教員向け研修

教員が抱える不安。実証研究から見えた教員向け研修の必要性

 現在、子どもたちに求められる能力は創造力、問題解決力、分析力、思考力など、他者と触れ合うなかで、自分の考えを持ち、お互いを尊重しながら新しい何かを生み出す力だ。2020年から改革されるセンター試験でも「思考力・判断力・表現力」を評価する出題形式に変わる予定で、暗記して受かるような試験ではなくなっていくのだ。2014年度の中央教育審議会の訊問の中でも、子どもたちに必要な力を育むためには、アクティブ・ラーニングやそのための指導方法の充実が必要と言われており、教員はこれまで以上に授業の中でグループワーク、協働学習、そしてアクティブ・ラーニングを取り入れていくことが求められている。

「共有性」「即時性」「保存性」が優れたICT機器はこのような学習と相性がいい。同社で実施した、ICT活用の実証研究『DIS School Innovation Project』でも、多くの実証校がアクティブ・ラーニングやスキル育成を目指す授業の中でICT活用にチャレンジしてきた。

実証研究の開始当初、現場の教員たちはICT活用における不安を抱えていた。

「どう使っていいかわからない」

聞こえてきたのは、実に素直な言葉だ。各自治体や教育委員会、各学校では、教員向けにICT研修などが行われているが、それだけではスキルアップや知識の習得が難しいという声も少なくない。それゆえ、現在のICT教育は、各教員のICTリテラシーやスキルに一任されているケースが多い。だが、教員のICTスキル格差は、授業を受ける子どもにとってはあずかり知らぬこと。ICTスキルの高い教師と、ICTスキルの低い教師から受ける授業によって、その質に差が生まれるような状況はあってはいけない。

多くの小中学校がそのような“ICTスキル格差問題”を抱える中、実際に受講した教員から高い評価を受けているのがDISが展開している『教員向け研修サービス』だ。2014年5月から開始されたこのメニューは、ICTの基本的な操作から、教育現場での効果的な活用方法などを学ぶことができる。 開発の経緯を西崎主任は、以下のように説明する。

「私たちは、教育の情報化には3つの要素が重要だと考えています。1つはタブレットをはじめとする学習用機器の整備、2つ目がハードやソフトのメンテナンスといった運用のサポート、そして3つ目が先生方のICT活用指導力の向上です。整備したICTをより効果的に活用していくためには、教員のICT活用指導力を向上させることが不可欠ですが、効果的な活用方法が学べる研修は少ないという現場の意見も多く、この研修メニューを開発するに至りました」

ダイワボウ情報システム株式会社 販売推進部 マーケティング部 文教グループ 主任 西崎 豪

ダイワボウ情報システム株式会社 販売推進部 マーケティング部 文教グループ 主任 西崎 豪

ICT活用における3つの要素

教員のICT活用スキルを向上される、3段階研修

では、研修の内容はどのようなものなのだろうか。内容は大きくふたつに分けられるという。ひとつは「ICT操作スキル習得メニュー」。これはタブレット端末やアプリケーションなどの基本操作など、ICTを活用した指導を行うために必要な基本的な使い方を習得する部分。スマートフォンが普及したといっても、まだまだICT機器に不慣れな人は多い。ここでしっかりと基礎を覚える。

そしてもうひとつが、「ICTを活用した授業デザイン力強化メニュー」だ。これには2つのコースがあり、まずはアクティブ・ラーニングの実現を目指した授業をデザインしていくための研修「アクティブ・ラーニングを実現する授業デザイン研修」がある。この研修ではタブレット端末を活用して、アイデアを書き込んだり、共有したりするなど、教員自らがアクティブ・ラーニングを体験しながら、学んでいく。西崎主任はこの研修について以下のように話してくれた。

「タブレット端末を導入すると、すべてのシーンで使わなければいけないというプレッシャーを感じている先生が多くいらっしゃいます。しかし、研修の中でタブレット端末は学習ツールのひとつなのだということを理解していただける。また、『自分では思いつかない活用方法を知った』や『学習について具体的にイメージできるようになった』などの声をいただいています。ICTに関して苦手意識のある先生が非常も多いので、自ら経験していただいて、心理的なハードルを下げることが必要だと思います」

実際の研修風景

実際の研修風景

冒頭に述べたように、自治体などで行われているICT研修もあるが、研修メニューの開発はノウハウと膨大な労力が必要なため、内容が古くなっていたり、実際の教育現場では則していなかったりするものも少なくない。その点、DISの研修は実証研究を踏まえて開発されたメニューであり、実証研究校で実践された授業例などを活用して研修を進めていくので、具体的活用場面をイメージしやすいという点が大きい。さらに「授業デザイン力強化メニュー」には、インテル株式会社協力のもと、「intelR Teachプログラム(※)」をベースに開発した「21世紀スキルを育む授業デザイン研修」も用意されている。

※「IntelR Teach プログラム」とは…インテルの教育分野における社会貢献事業の一環として子供たちに21世紀型スキルを育成するための“思考支援型”授 業の実現を目指した教員向け研修プログラム。世界70か国で1,500万人以上の教育関係者が受講している。

授業デザイン力強化メニュー

また、こうした研修は、IT機器の操作に慣れている教員と、IT機器が苦手な教員が授業デザインについて意見を交換するきっかけにもなっていると西崎主任は話す。実際、ICTを使った教育がうまく進んでいる学校では、授業研究を定期的に開催し、教員同士がうまく融合していることが多いという。

これからの時代に必要な資質や能力を子どもたちに伝えるためには、教える側のスキル向上が欠かせない。
その最初の一歩として、こうした研修メニューは今後、ますます重要な存在になっていくだろう。

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