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コードタクト「schoolTakt」

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授業支援システムは
「意見共有」がゴールじゃない!

 ウェブブラウザベースの授業支援システム「schoolTakt(スクールタクト)」は、ICT先進校を中心に導入が広がっている。同製品は、マルチOS、マルチデバイス対応で使用できることや、リアルタイムのやり取りが優れていること、加えて、どんな教科、どんな教師の授業にも適応しやすい汎用性と自由度の高さが魅力だ。そんなschoolTaktを開発した株式会社コードタクトの代表取締役である後藤正樹氏に、製品にかける想いを聞いた。

後藤氏


後藤 正樹
株式会社コードタクト 代表取締役 エンジニア / IPA認定スーパークリエータ / コンダクター

プロフィール
東京大学大学院総合文化研究科、洗足学園大学指揮研究所を卒業、早稲田大学教育学研究科博士課程在学中。大学院在学中より代々木ゼミナール物理科講師やNPO法人FTEXTにおいて検定外数学教科書の開発に参加し、その後サイボウズ、ベストティーチャー、総務省先導的教育システム実証事業プロジェクトマネージャーを経て、現在、株式会社コードタクト代表取締役、株式会社スタディラボ取締役、日本デジタル教科書学会の役員などを務める。 慶應義塾大学特任招聘教授 夏野剛氏のもと、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「未踏IT人材発掘・育成事業」において未踏スーパークリエータに認定、日本e-Learning大賞奨励賞。一方、オーケストラ指揮者としても活動している。

製品開発を支えたものは
「一斉授業」に対する問題意識

 授業支援システム「schoolTakt」を手がける株式会社コードタクトは、2015年に設立した。同社代表取締役の後藤正樹氏は、それ以前から製品のベータ版を小中学校に提供し、先進的な取り組みを進める教育者らと実証実験を重ねてきた。次回紹介する東京都小金井市立前原小学校の松田孝校長などが、その一人だ。後藤氏が学校にschoolTaktを提供し始めた頃は、今ほどICTに関する取り組みが進んでおらず、電子黒板を導入する教育機関も多かった。そんな中、後藤氏はなぜschoolTaktを開発したのか。

「もともとソーシャルリーディングのソフトを作っていて、大学の輪読などで使用できないかと考えていました。皆がブラウザ上で同じデジタルコンテンツを読み、誰かが下線を引けば、リアルタイムにそれが共有されるという具合です。しかし、このシステムは同じコンテンツを共有し合う小中学校の授業でも使えるのではないかと思い、ソーシャルリーディングのソフトを派生させてschoolTaktを製品化しました。当時はまだ、クラウドやリアルタイムの重要性を教育現場で唱える人は少なかったのですが、私はその場にいる人がリアルタイムで情報共有・交換できることにとても価値を感じていて、schoolTaktを作りました」と後藤氏は開発経緯を語る。

 こうした開発経緯から見えてくるのは、後藤氏が旧態依然とした一斉授業のあり方に問題意識を持っていたことだ。この先、ITが教育現場に浸透していけば、教師が1対多で知識を伝達する授業は、テクノロジーが取って変わる可能性もある。一方で、これからの社会で求められるスキルは、知識をいかに活用できるか。学校現場では、子供たちのアウトプットの質を高めていくことが重要になってくるのだ。そうした学習を実現できるツールはないか。この問題意識の辿り着いた先が、schoolTaktだといえる。

 このような後藤氏の考えに共感を持つ教育関係者は、意外に多い。結果として、2015年には総務省「先導的教育システム実証事業」にコンテンツプロバイダーに採択されるなど、schoolTaktの注目度が高まった。

schoolTaktで注目したい
3つの新機能

 そんな開発経緯で生まれたschoolTaktであるが、現在は、協働学習機能やプレゼンテーション機能、ファイル共有機能、ポートフォリオ機能など、児童生徒のアウトプットを高める機能が追加されている。なかでも、schoolTaktの魅力的な機能について、後藤氏は下記の3つを挙げた。

[1]ルーブリック機能

 ルーブリックとは、児童生徒の学習到達状況を評価するための評価基準であるが、昨今は、探求学習や協働学習でルーブリック評価を取り入れる教育者が多い。そこでschoolTaktでは、ルーブリックをschoolTakt上で作成し、評価できる機能を設けた。児童生徒たちは提示された項目に対して、どれくらいできたかを自己評価し、それを記入する仕組みだ。

 後藤氏はルーブリック機能について、「紙のテストの点数は、人間の能力の一部分の評価でしかありません。しかし、昨今はもっと人間の能力を多面的に捉えるパフォーマンス評価が求められています。そうなると、まだ日本では過渡期でありますがルーブリックを用いるのが最適だと思いました」と語る。すでに同機能は、福島県新地町に試験導入され実証実験が始まっているという。後藤氏は「ルーブリック評価を取り入れたことで、児童の中に“この授業で何を達成しなければならないのか”が見えてきている。友達の批評を踏まえて、自分がどう考えたかの評価する項目も入るので、先生の授業スタイルも変わっていくだろう」と述べる。

ルーフ?リック機能

ルーブリック機能は、予めたくさんのテンプレートが用意されており、先生がカスタマイズして使う。もちろん、教師が独自項目を加えることも可能だ。ポートフォリオ機能とも連携を行い、生徒の理解度や学習の到達度などを閲覧できる。

[2]「コメント・いいね機能」に発言マップを追加

 schoolTaktは、児童生徒が投稿した書き込みについて、「いいね」を押したり、コメントを残したりすることができる。児童生徒がよりインタラクティブになるツールを設けることで、授業への参加感や主体性、自己肯定感を高めることがねらいだ。

 こうした児童生徒間のやり取りを可視化したのが「発言マップ」だ。コメントした数とされた数が可視化されるなど、授業の参加度などがひと目で把握できるようになっている。後藤氏はこれについて、「ICTを教育に活用するメリットは、今まで見えなかった部分が見える化されることです。今後はこうした発言マップのデータに加えて、WEBQU(※)などの外部データとの連携を進めていきたいと考えています。いろいろな指標で授業が可視化できることで、若手の先生の育成にもつながると思います」と抱負を語る。

※WEBQU・・・WEBQUは教員が児童生徒の状態を多角的に知ることができるアンケートツールです。アンケートはweb上で行われ、結果もこれまでより大幅に早く入手できるため、リアルタイムの学級経営が可能となり、観察や面接だけでは知り得なかった状況を入手でき、さらに現状に合わせた対策のヒントがわかります。


WEBUQ連携_1
WEBUQ連携_2

授業中に児童生徒が書き込みしたもの(写真上)に対して、互いにコメントや「いいね」を推す。そのやり取りを動線で可視化した「発言マップ」(写真下)。インタラクティブな授業になるほど、複雑な線を描く。

WEBQU連携_3

横軸が「閲覧した数」で、縦軸が「いいねをもらった数」。授業に対する児童の積極性や、多くの児童が興味をもった回答などが把握できる。

[3]ワードクラウド機能

 schoolTaktは、これまでも児童生徒が書き込んだ内容に対して、キーワードによる絞り込み検索が可能であったが、一方でクラス全体の意見を俯瞰することはできなかった。そこで「ワードクラウド機能」では、児童生徒がどのような内容を書き込みしたのか、単語の自動抽出が可能になった。後藤氏は「協働学習やグループ学習では、グループごとにどのような話し合いが行われているのか、教師は把握しづらいです。そんな時にこの機能を使ってもらえればと思います」と語る。

ワート?クラウト?_1
ワート?クラウト?_2

児童生徒が記入した書き込みの単語を自動抽出し、使われている単語の回数が多ければ多いほど、文字が大きく表示される仕組み。クリックするだけでその単語を使った児童生徒の課題を表示する。

ICTは学習状態を良くするために有効

 このような新機能を追加したschoolTaktであるが、数ある授業支援システムのなかで、ここまで児童生徒の関係性や意見を見える化したものは、他にない。なぜ、このような機能を追加したのか。その理由について後藤氏は、schoolTaktを使い続けていくうちに、ICTが学級状態や学級運営に活かせると気づいたからだと語る。

「今までICTを活用したアクティブ・ラーニングや探究学習などを行うにあたり、そもそも学級状態が良くないと成立しないと言われてきました。しかし、子供たちがschoolTaktを通して、オープンな環境で意見共有ができるようになると多様性を享受する気持ちがめばえ、学級状態が良くなるのではないかと考えるようになってきました。たとえば、前原小学校で朝の会にschoolTaktを利用しているのが、そうです。子供同士が好きなことを共有したり、今まであまり話したことがない友だちの意見を知ったりなど、授業だけじゃなく学級運営もICTで支援できると思っています」と後藤氏は語る。

 確かに、教師はクラス全員が見えているようで、見えていないことが多くあるだろう。その点、schoolTaktの機能を使えば、ひとつの視点から子供同士でどのような交流があったのかを知ることができる。単なる授業支援ツールとして、“意見共有ができてよかった”で終わるのではなく、schoolTaktは子供たちの人間関係の充実に有効なサービスでありたいというのだ。後藤氏は「教室を科学するようなラーニングアナリティクスのサービスも提供していきたい」と今後の展望を語る。

 一方で、教育現場でのさらなる普及もめざして、オフラインでの使用や、UIの変更なども進めているという。今後ますますICT整備が進む教育現場において、より良い学びをつくるプラットフォームをめざす考えだ。

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