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Designedラボ 第05回 「C2960LでPoE給電したAP消費電力の謎」

こんにちは。社会人2年目の新米SEのTEと申します。

前回は、工場出荷状態のC2960LではPoEは動作するということがわかりました。しかし、消費電力が最大8.3WのAP1815iが、ステータス上では15.4Wも消費していた事が判明しましたので、今回はこの点について調査したいと思います。

まずは、そもそも本当に15.4W消費されているのかを確認するために、5台のAP1815iをC2960Lに接続しPoE給電が行われるかどうかの検証を行います。

AP1815iがデータシート記載通りの消費電力(8.3W)であれば、5台のAP1815i(合計41.5W)をC2960L(総電力供給量67W)に接続した場合、全てのAPが給電されるはずです。
逆に1台でも給電されなければ、実際は15.4W消費されているという事になります。

では、今回は下図の前回の構成を引用したいと思います。

ここに新たに追加する機材が以下となります。
・設定済AIR-AP1815I-Q-K9C ×4(仮想コントローラ内蔵アクセスポイント)
・メタルケーブル ×4

早速、C2960LにAP1815iをメタルケーブルで1台ずつ接続しPoE給電ができているか確認したいと思います。すでに前回の1台目のAPが接続されていますので、今回は2台目から接続していきます。

2台目接続・・・・LEDランプが点灯し給電OK!
3台目接続・・・・LEDランプが点灯し給電OK!
4台目接続・・・・LEDランプが点灯し給電OK!
5台目接続・・・・・・・・LEDランプ全く反応なし

もう一回抜いて再度チャレンジ!
5台目再接続・・・・・・・・LEDランプ全く反応なし

やはり5台目のみ給電されませんでした。他のAPが実際には15.4W消費している可能性が高いです。念のためこの状態でC2960LのPoEのステータス(実際の使用電力量など)を確認したいと思います。

CLIコマンドで下記の赤字部分を入力します。
--------------------------------------------------------------------
Switch>enable
Switch#show power inline

(以下、出力結果)
Available:67.0(w) Used:61.6(w) Remaining:5.4(w)

Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
------------ -------- --------- --------- ------------------------- ------- -----
Gi0/1 auto on 15.4 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/2 auto on 15.4 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/3 auto on 15.4 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/4 auto on 15.4 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/5 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi0/6 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi0/7 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi0/8 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
------------------------------------------------------------------------------------

出力結果から、全てのAPで一台あたりしっかり15.4W消費しており、残りの電力供給量が5.4Wしか無く、5台目のAPが給電されていないことがわかりました。

では一体なぜ、15.4Wも消費されてしまうのでしょうか?
C2960LのコンフィギュレーションガイドのPoE関連について記載されているページで少し調べてみました。すると以下の記載がございました。

(抜粋)
受電装置がクラス 0(クラス ステータス不明)またはクラス 3 の場合には、スイッチは実際の必要電力量に関わらず、装置に対して 15,400 ミリワットを割り当てます。

AP1815iのクラスに関しては、先ほどの出力結果からクラス0と確認できます。
つまり、AP1815iの消費電力は最大8.3Wですが、クラス0なのでC2960LはAPの消費電力に関わらず15.4W供給してしまったという事になります。

んー。これは、もったいないですね。このままだと電力を無駄使いしている上に、さらにスイッチにPoE接続可能なAPの最大数も減ってしまいます。何とかしたいところですが。
実は先ほどのC2960Lコンフィギュレーションガイドをしっかり読まれた方はすでにお気付きかもしれないですが、電力の供給量を調整できそうな記載があったのです。

(抜粋)
power inline consumption wattage グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用すると、IEEE 分類で指定されているデフォルトの所要電力を上書きできます。IEEE 分類の規定と装置が実際に必要とする電力との差分は、グローバル電力バジェットに戻され、追加の装置に使用することができます。これにより、スイッチの電力バジェットを拡大し、より効率的に電力を使用できるようになります。

これはドンピシャですね。では、早速検証してみましょう!
今回は、ポート1〜5の電力供給量を少し余裕を持たして9.0Wに調整したいと思います。

CLIコマンドで下記の赤字部分を入力します。
--------------------------------------------------------------------
Switch>enable
Switch#conf t
Switch(config)#int range gigabitEthernet 0/1-5
Switch(config-if-range)#power inline consumption 9000
Switch(config-if-range)#end
Switch#show power inline

(以下、出力結果)
Available:67.0(w) Used:45.0(w) Remaining:22.0(w)

Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
------------ -------- --------- --------- ----------------------- ------ ------
Gi0/1 auto on 9.0 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/2 auto on 9.0 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/3 auto on 9.0 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/4 auto on 9.0 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/5 auto on 9.0 AIR-AP1815I-Q-K9 0 30.0
Gi0/6 auto off 0.0 n/a      n/a 30.0
Gi0/7 auto off 0.0 n/a       n/a 30.0
Gi0/8 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
-------------------------------------------------------------------------------------

出力結果から、ポート1〜5のAP1815iの実際の消費電力が9.0Wになっている事がわかります。
そして、見事5台目のAPのLEDランプが点灯し給電する事ができました!!
最後に注意点としまして、電力バジェットを手動で設定する場合は、スイッチと受電装置間のケーブルの長さなどにより失われる電力損失を考慮する必要があるそうです。
このように環境によって必要となる電力は変動するため、実際の導入時には必ず事前検証をお願い致します。

少し長くなりましたが、以上となります。今後とも引き続きよろしくお願いします。

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