各メーカーが提案するネットワーク機器とネットワークセキュリティソリューションをご紹介

情報通信ネットワーク産業協会(以下、CIAJ)は、毎年12月に「通信機器中期需要予測」を発表している。今回は2025年12月に発表された最新の調査を基に、ルーターやLANスイッチ、光アクセス機器を対象に行われたインターネット関連機器に関する市場について、CIAJ市場調査部長 前野 剛氏に話を聞いた。

通信トラフィックの増加を背景に市場拡大

CIAJはICT産業の健全な発展を目的に、政府および関係省庁に対する政策要望を行うとともに、情報通信業界が直面する環境負荷低減や通信ネットワークセキュリティといったさまざまな課題への対応を進めている。こうした活動の一環として、CIAJは通信機器を中心とした市場動向調査も継続的に実施している。その代表例が、1960年から発刊している通信機器業界の中長期的な市場動向を示すレポート「通信機器中期需要予測」だ。

本レポートでは、通信機器を「コンシューマ関連機器」「ビジネス関連機器」「インフラ関連機器」「インターネット関連機器」の四つのカテゴリーに分類し、受注出荷統計や会員企業へのヒアリングを基に調査・分析を行っている。今回は、これら四つのカテゴリーの中でも、ルーターやLANスイッチ、光アクセス機器を対象としたインターネット関連機器に焦点を当てる。

それでは2024年度のインターネット関連機器市場について、品目ごとに見ていこう。まずルーターについては、国内需要が1,270億円となり、前年度比で0.5%の増加となった。このうち通信キャリア向けは0.6%増と堅調に推移している。背景として、クラウドサービスをはじめとする各種サービスの拡大に伴い通信トラフィックが増加しており、それに対応するための設備投資が挙げられる。また企業向けも0.2%増と微増しており、ハイブリッドワークといったワークスタイルの変化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に加え、Web会議の定着、5G・Wi-Fi 6/6E/7といった通信技術の利活用拡大が需要増加の要因となった。

続いてLANスイッチについては、国内需要が1,668億円となり、前年度比で0.3%の増加となった。市場拡大の要因としては、ルーターと同様、通信トラフィックの増加に伴うネットワーク増設需要に加え、ハイブリッドワークの定着、Web会議利用の拡大が挙げられる。

最後に光アクセス機器については、国内需要が264億円となり、前年度比で20.3%の減少となった。光サービスの拡大や高速化ニーズに対応するため、通信事業者によるネットワーク増強が進められていたものの、需要増加が一巡したことが影響したとCIAJでは分析している。

インターネット関連機器の国内金額
出所:通信機器中期需要予測[2025-2030年度](情報通信ネットワーク産業協会)

市場は今後も微増傾向が続く見込み

本レポートでは、今後の市場動向についても分析を行っている。まずルーター市場は、今後も微増傾向で推移すると予測される。その背景には、通信キャリア向けを中心に、増加し続ける通信トラフィックに対応するための設備投資が引き続き見込まれる点がある。しかし、仮想化の進展により設備の効率化が進むことから、市場の成長ペースは緩やかなものにとどまるとCIAJはみている。一方、企業および官公庁向けでは、中期的にはDXへの対応がプラス成長の要因となるものの、仮想化の進展に伴い、機器単価の低下が想定され、市場の拡大は限定的となる見込みだ。

LANスイッチは、通信トラフィックや接続端末数の増加を背景に、ネットワーク構成の見直しを目的とした設備投資が進み、台数ベースでの増加が予測される。収容数の拡大や部材価格の上昇により、機器単価も上がる見込みだ。また、データセンター事業者では機器の共用化が進展し、設置台数は抑制されるものの、企業やユーザー側の設置需要は引き続き拡大するとCIAJでは予測している。加えて、AI活用の進展に伴う通信帯域の拡大や、動画配信・クラウドサービス利用など、大容量通信へのニーズの広がりによって、市場は増加傾向で推移するとみている。一方で、汎用サーバーを用いた仮想LANスイッチによるネットワーク構築の広がりにより、従来型のLANスイッチ製品の需要は減少する可能性がある。さらに、無線LANへのシフトが進むことで、エッジスイッチの需要も縮小する見込みだ。

前野氏はルーターおよびLANスイッチの今後の需要について次のように語っている。「企業におけるDX投資の再開・継続や、老朽化したネットワークインフラの更新需要を背景に、一定の需要が維持される見通しです。クラウド利用の拡大に伴う通信トラフィックの増加を受け、データセンター向けや企業向けの高機能機器への更新需要が、市場を下支えする構図は今後も続くと考えられます」

光アクセス機器については、大容量コンテンツ需要の拡大による高速通信サービスの利用増加や、モバイルサービスのオフロード需要、老朽化機器の更新需要などを背景に、増加傾向で推移する見込みだ。

今後の市場を動かす三つのトレンド

今後の市場を動かす三つの主要な技術トレンドについて、前野氏は次のように説明する。「一つ目が、通信インフラにおける仮想化の進展です。専用のハードウェアを用いるのではなく、汎用サーバー上でソフトウェアとしてルーターやスイッチの機能を実現する技術が広がっています。これにより、設備投資を大幅に抑えることが可能になります。一方で、機器単価の低下やハードウェア需要の減少につながるため、既存のハードウェアベンダーにとっては、事業環境が厳しくなる可能性も否定できません。二つ目は、Wi-Fi 7の登場です。これは市場を大きく活性化させる起爆剤になるとみています。Wi-Fi 7は、最大通信速度がWi-Fi 6と比べて約4.8倍に向上し、低遅延かつ高効率な通信を実現します。その結果、これまで有線接続が主流だった高精細なWeb会議や8K映像配信、製造現場におけるAR/VRの活用、大容量コンテンツの送受信、さらには多数のIoTデバイス接続が無線環境でもより円滑に行えるようになります。企業やSOHOにおいては、高速な通信速度だけでなく、混雑した電波環境下でも安定して接続できる点が重視され、Wi-Fi 7対応機器へのリプレース需要が加速するでしょう。三つ目が、AIと通信技術の融合です。すでにいくつかの分野で社会実装が進んでいます。例えば、ネットワーク運用・保守の分野では、通信トラフィックをAIがリアルタイムで分析するAIOpsを採用することで、障害の予兆検知や負荷に応じた帯域の自動最適化が行われています。これにより、運用の効率化とダウンタイムの削減が図られています。
また、無線アクセスネットワークにAIを組み込む『AI RAN』の開発も進んでおり、電波干渉の抑制や電力消費の最適化といった効果が期待されています。さらに、端末に近い場所でAI処理を行うエッジAIの活用も拡大しています。低遅延なレスポンスが求められる自動運転やスマート工場などの高度なサービスを支える基盤技術として、その重要性は今後さらに高まっていくでしょう」

情報通信ネットワーク産業協会 市場調査部長 前野 剛 氏

情報通信ネットワーク産業協会
市場調査部長
前野剛 氏

最後に前野氏は、販売店に向けたメッセージとして次のように語った。「インターネット関連機器は、いまや社会のあらゆる活動を支える基盤となっています。現在、市場はWi-Fi 7への移行やAI導入といった大きな転換期を迎えており、販売店の皆さまには、単に機器を売るだけでなく、お客さまが抱える通信の遅延やセキュリティへの不安といった課題を、最新技術によって解決する役割が、これまで以上に求められています。とりわけ中小企業やSOHOに対しては、複雑化する最新規格を分かりやすく伝えた上で、最適な導入プランを提案することが、信頼の獲得と市場全体の活性化につながります。当協会の予測が示す通り、関連需要は今後も堅調に推移する見通しです。日本のデジタル基盤を支える取り組みを、ぜひ共に進めていきましょう。また、当協会は情報通信認証連絡会のメンバーとして、総務省などと連携し、関連ガイドラインを作成するなど、電波に関する法令遵守の一端を担っています。総務省は、無線設備や市場に流通している端末機器、Wi-Fiルーターなどを購入し、日本の技術基準に適合しているかどうかの試験を行っています。無線関連製品はEコマースとの親和性が高い一方で、近年は海外業者や個人事業主を通じて、海外製品と一般消費者との接点が拡大しています。その結果、必ずしも日本国内での販売を想定していない製品が流通するケースも増えています。これらの製品が技術基準に適合しないまま使用された場合、『電波法』に抵触し、お客さま自身が責任を問われる可能性があります。販売店の皆さまと協力することで、こうしたリスクを最小限に抑えていきたいですね」