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とよぢぃのねっとあっぷ四方山話 第8回

とよぢぃのねっとあっぷ四方山話

DISのとよぢぃと申します。
『ねっとあっぷ四方山話・コラム(2)』をお届けします。

前回のコラムではネットアップの生立ちの前半部分をご紹介しました。今回は後半部分のご紹介です。ネットアップはまだ創立33年ほどの会社ですが、ここに来てちょっと想像してなかった方向性の動きが出てきています。
前回のコラムでは7番目の時期を『NetApp 再降臨 ASA r2』としてましたが、『第3次転換期 ASA r2』に変えてお届けします。

コラム(1)

■ Network Appliance 降臨
■ 創成期 Data ONTAP 5.x まで
■ 成長期 Data ONTAP 6.x
■ 第1次転換期 ONTAP 7G

コラム(2)

■ 第2次転換期 ONTAP 8
■ NetApp 昇天 ONTAP 9
■ 第3次転換期 ASA r2

では、ネットアップ史後半の始まりです。

第2次転換期 ONTAP 8

2010年にData ONTAP 8.0がリリースされ、第2次転換期にはいります。2004年に買収したSpinnakerのOS(SpinOS)との統合が進み、c-Mode(クラスタモード)と呼ばれるクラスタOSとONTAP 7Gを踏襲した7-Modeと呼ばれるOSの共存期間が第2次転換期の前半です。この時期は実は混乱期でもありました。私が知る限りNetAppにとっても、NetAppのユーザにとってももっとも混乱した時期だったと言えるんじゃないかと思っています。ONTAP 7GからONTAP 8の7-Modeへは通常のOSアップグレードと基本的には変わらないので特に大きな問題はありませんでしたが、OSのアーキテクチャが大きく異なるc-Modeへは単純にOSのアップグレードだけではできなくて、モード変更(いわゆる7toC)という作業が必要だったためです。
NetApp的にはそぉ遠くない将来を見据えてc-Modeでの導入やc-Modeへの移行を推し進めたかったようですが、7toCの作業コストや移行後のリスクを懸念するユーザも多かったようで、なかなかNetAppが思い描いていたようには進まなかったようです。しかし、なんとかこの難しい時期を乗り越えてONTAPは次のステップ、第2次転換期の後半へと進んでいきます。

第2次転換期の後半は、2015年にリリースされたONTAP 8.3で幕を開けます。ONTAP 8.3から7-Modeが廃止され、c-Modeのみになり、現在のONTAP 9によるクラスタ環境の基礎を築いた時期ともいえます。

ONTAP的には7-Modeの廃止とクラスタOS化を境目にこの時期の前後半が分かれますが、ハードウェア面での前半部分の目玉はSSDへの対応でしょう。SSDの対応って単にHDDの替わりにSSDをつなげばうまいこと行くわけではないんですね。
細かいことは省きますが、ONTAPでは細かなデータのランダムな書き込みをある程度まとめてからシーケンシャルっぽくHDDに書き込むような仕組みが元々実装されていたので、SSDへの対応もそれほど問題なくスムーズに行えました。
SSDの特性的にシーケンシャルな書込みはとても高速でかつSSDの寿命に対する影響も小さいんですが、細かいデータのSSDへのランダム書込みは、SSD的には非常に負荷のかかる処理になりSSDの寿命を縮めることにもつながります。もちろんランダムな書込みであってもHDDに比べればかなり速いのは言うまでもありませんが、HDDと比べて容量単価がめちゃめちゃ高価なSSDの寿命を縮めてしまうのはまずいですからね。

さて、Data ONTAP 8.0.2からSSDが使えるようになったわけですが、SSDをキャッシュとして使用するFlashPoolもこの時期に実装されました。
HDDの大容量化が進み、容量要件と性能要件のバランスが非常に取りにくくなっていた時期にSSDのサポートやFlashPoolと言った新機能が出てきたことで、無理なくいろいろな性能要件にあうストレージを構成できるようになりました。
とは言え、当時のSSDはお値段がとても高くて、導入における大きな障害になったことも事実です。
まぁ、SSDが超高価だったのは、ネットアップだけの問題ではありませんし、今でもそれなりに高い物ではあるんですが。

第2次転換期の後半に入ると大容量化したHDDや高価なSSDをできるだけ効率よく使用できるようにするための仕組みとしてONTAP 8.3に実装されたのがADP (Advanced
Drive Partitioning)と呼ばれる仕組みです。これにより大容量のHDDや高価なSSDを容量面で無駄なく使えるようになりました。
ADPの詳細については四方山話の『技術紹介』編で別途ご紹介しようと思ってます。

この時期のハードウェア面でのもう一つのトピックはAFF (All Flash FAS)のリリースです。今では多くのモデルがリリースされているAFFですが、最初のAFFはこのタイミングでリリースされました。この時期はAFF以外にもとても多くのモデルが幅広くリリースされています。
ローエンドがFAS2200/2500シリーズ、ミッドレンジはFAS3100/3200、ハイエンドはFAS6000/6200シリーズになります。

さらにこの後、2014年になるとFAS8000シリーズが登場します。
ミッドローがFAS8020、ミッドハイがFAS8040/8060、ハイエンドがFAS8080になります。FAS8020はコスパがよかったせいもあり、当時とても多く世に出たプラットフォームでした。

そして、1年後の2015年には、FAS8000シリーズをベースにした最初のAFFシリーズとしてAFF8000シリーズがリリースされています。
AFF8000シリーズの外見はFAS8000シリーズと同じでした。

この時期はとても多くのプラットフォームがリリースされて、どんどん新しいものに移り変わっていきました。そぉそぉ、お気づきの方も多いかもしれませんが、見た目的にも、コラム(1)のころも含めて、どんどん変わったのもこの時期。NetAppフロントベゼル史なんてのも可能なくらいに変化にとんでいます。まぁ、このあともまだまだ変化は続きますが。

クラスタ化されたONTAPの最初のリリースであるONTAP 8.3の登場とAFF8000シリーズという最初のオールフラッシュストレージのリリースという大きなイベントをもって第2次転換期が終わります。

NetApp 昇天 ONTAP 9

さて、第1話のタイトルは「降臨」でした。「降臨」とは「神が地上へと降り現れる事」というような意味になります。「昇天」とは「神が天へ昇る事」。ONTAP 9.0が2016年にリリースされて以降現在に至る期間になります。
7-Modeからの移行がすんでc-Modeも安定し、第2次転換期の混乱も乗り越えていよいよ本格的にクラスタOSとして展開していく時期になります。c-Modeへ移行する際に積み残されていた機能もほぼほぼONTAP 9で再実装されてある意味成熟していたONTAP 7Gと比較しても同レベルかそれ以上のグレードのOSとしてONTAP 9はリリースされました。

そして、もうひとつ。ONTAPは天に昇って雲に乗りました。2015年リリースのONTAP 8.3でAWS向けにONTAP Cloudが提供されたのを皮切りに、ONTAP 9.1からはMicrosoft Azure向けにもONTAP Cloudが提供されました。2018年リリースのONTAP 9.4から名称が
Cloud Volumes ONTAPに変わり、Google Cloudもサポート。
そしてさらにクラウドごとに別ライセンスだったCloud Volumes ONTAPのライセンス形態ですが、3つのクラウドに対して共通のプラットフォームとして提供されるようになりました。もともとONTAPの核になる部分は非常にシンプルで特殊なハードウェアを必要せず、いろいろなプラットフォーム上で動かすことが可能なものでした。そしてパブリッククラウドの登場とともにそれを現実のものにしたわけです。さらに、プライベートクラウドにも対応すべくごく普通の仮想環境でも使用できるONTAP Selectもリリースしています。

ONTAPに関してもう一つの大きなトピックが2023年6月のライセンス形態の変更によるONTAP Oneのリリース。これまでは機能ごとに別売のライセンスだったものを全部ひとまとめにしたライセンス形態に変更しました。数百万円もしたセキュリティオプションも含めたことでNetAppの強力なランサムウェア対策なども標準機能の仲間入り。

プラットフォーム的にはローエンドがFAS2600/2700シリーズ、ミッドレンジは
FAS8200からFAS8300/8700、ハイエンドはFAS9000です。そぉそぉ、シングルコントローラモデルはFAS2600シリーズまでで、これ以降のモデルはすべてHA構成のみになっています。

AFFシリーズもとてもたくさんのモデルがリリースされています。FASシリーズをベースにしたものだけでなくAFF固有のモデルもいくつかあります。
さらにCapacity Flash(QLC SSD)対応のCシリーズと呼ばれるモデルが出るなどとても多くのモデルがリリースされています。
さらにここに来て新プラットフォーム群がリリースされ2025年末くらいには2020年前後にリリースされた旧プラットフォームの多くが販売終了になり、新プラットフォームに置き換わる時期を迎えています。新旧のプラットフォームが入れ替わる過渡期にあたる2025年はNetApp史上最多のプラットフォームが乱立しています。

忘れちゃいけないですね。AWS/Azure/GCP と言ったパブリッククラウドもいまや
ONTAPのれっきとしたプラットフォームの仲間です。
NetApp提供のCloud Volumes ONTAPだけでなく、各ハイパースケーラーが提供するファーストパーティソリューション(Amazon FSx for NetApp ONTAP、Azure NetApp Files、Google Cloud NetApp Volumes)もあります。

そぉそぉ、ちょっと注意を。間違っても「召天」ではないですよ。「召天」とは「死んだ魂が神の元へと召されていく事」。NetAppは「召天」ではなく「昇天」しました。NetAppはバリバリに元気です。

第3次転換期 ASA r2

2回に渡ってご紹介してきたコラム・ネットアップ史ですが、今節の「第3次転換期 ASA r2」を以ってとりあえず一段落。
さて、「ASA」って今となってはみなさんご存知のNetAppワードですよね。「ASA」は「All SAN Array」の頭文字。実は前回のコラムの成長期のところでご紹介したとおりNetAppは20年以上前からFCPやiSCSIと言ったSANに対応していました。iSCSIの標準化にも関わっています。ユニファイドと言う形でNFSやCIFS/SMBなどのNASとの同時サポートを提供してきたわけです。このコラムでもここまではプラットフォームとして多くのFASやAFFのシリーズをご紹介してきました。
実は前の「NetApp 昇天 ONTAP 9」の時期にASAシリーズがリリースされています。
NASで始まり、SAN対応を追加してユニファイドストレージをウリにしてきたNetAppですが、2020年前後、ONTAP 9.7~9.8のころにASA AFFシリーズ(ASA AFF A220/250/400/700/800)をリリースしています。ASA AFFシリーズのOSはFASやAFFと同じONTAPですが、NASの機能を外してSAN専用としてリリースしたものです。「Network Appliance降臨」でご紹介した通り、NetAppはNFSサーバとしては後発でしたが、SAN専用のASAシリーズはもっと後発。SANストレージ市場には先発のSANストレージベンダーがうじゃうじゃいるところにASAを出したわけです。そんな状況ですから一筋縄で簡単にうまいこと行くわけはありません。NAS環境だとお客様が利用しているストレージベンダーから異なるストレージベンダーへの乗り換えを比較的行いやすいのですが、SAN環境ではその仕組み上の垣根だけでなく、互換性マトリックスなるものがあって異なるベンダーのSANストレージへの乗り換えをいっそう困難なものにしていました。さらに「NetAppはNAS」と言うイメージが強くあったのも当初ASAがあまり広まらなかった要因なのかも知れません。
NetAppは20年以上も前からSANをサポートしているにも関わらずです。

最初のASAシリーズであるASA AFFシリーズが出て5年ほど経ち、途中ASA Aシリーズ(ASA A150/250/400/800/900)、ASA Cシリーズ(ASA C250/400/800)を挟んで、登場してきたのがASA r2と呼ばれるシリーズです。
モデル的にはASA Aシリーズの後継に当たるASA A20/30/50/70/90/1Kの6モデル。可用性や性能面などの仕組み上の垣根を取っ払い、オペレーションも超簡単&シンプル。
さらには互換性マトリックスも大幅にシンプルにすることで、SANストレージとしてNetApp ASA r2を導入しやすくしただけでなく、他ベンダーのSANストレージからの乗り換えのハードルも大幅に下げることに成功しています。さらに、高性能SSDベースのASA AシリーズだけでなくCapacity Flashを搭載したASA C30もリリースしたことでASA r2環境でも安価なAFFストレージをデスティネーションにしたSnapMirrorの利用が可能になるなど利便性も向上しています。
NetAppのSANストレージ戦略は今後も目が離せないものになってきました。

なお、最新のNetApp FAS/AFF/ASAシリーズについては韋駄天の製品ラインアップページをご参照ください。

今後も新しいものをどんどん生み出し続ける NetApp にご期待ください!

とよぢぃ